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空が灰色だから 第1巻の感想

空が灰色だから(1) (少年チャンピオン・コミックス)空が灰色だから(1) (少年チャンピオン・コミックス)
(2012/03/08)
阿部共実

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阿部共実初の単行本『空が灰色だから』の第1巻が発売されました。発売前から「ブレイクまちがいなし」「今年を代表するタイトルになる」と、話題になっていった一作です。帯にもあるとおり、主に孤独な女子中学生の何だか上手くいかない日常をポップな絵柄で切り取った、オムニバスショートストーリーとなっています。


・第1話 スーパー宇佐美物語伝説
1~3話は『空が灰色だから手をはなそう』としてチャンピオンで短期連載されていたものです。子供から手を振られただけで顔が赤くなってしまうほどの恥ずかしがり屋の宇佐美さん(19歳)の話。とんでもなく恥ずかしい思いをすれば恥ずかしくなくなるだろう、とバニーガールの恰好で深夜徘徊するシーンで、おおむね満足です。宇佐美さん(19歳)のTシャツの模様もそうなんだけど、この作品中には『水玉』モチーフが多く登場します。単に作者の趣味なのか何か意図があるのか気になる。やっぱり、草間彌生氏あたりの影響なんだろうか?

・第2話 お前は私を大嫌いなお前が大嫌いな私が大嫌い
サブタイトルからして、普通じゃない感じが伝わってくる。女子によくある「あの子のことが嫌い。あの子ってさぁ」というやり取りが段々とエスカレートして…という内容。受験勉強を理由に「もう遊べない」と森永さんに言われた明の感情があふれ出す24ページの情報量に圧倒される。こういう病的な雰囲気が作者の大きな持ち味の一つだと思う。あと25ページの森永さんがつけているのとお揃いのペンダントを26ページで明もつけている(それまでもチラチラ見えている)のが分かるというのは、うまいと思う。

・第3話 空が灰色だから手をつなごう
短期連載分の最終回。母・黒川楓(32歳)と娘・穂(10歳)の、ちょっと心暖まる話。ラストの「ありがとう」の前の間の受け取り方によっては、逆の考え方もできそうだが、ここはハッピーエンドだと信じておく。サブタイトルが『~手をつなごう』だし。

・第4話 イチゴ オブ デスティニー
この回から、正式連載がスタート。トビラは本誌掲載時はカラーだったのだが、モノクロ収録で残念。この人のカラーは、ちょっと独特のものがあるので、2巻以降は、ぜひとも検討していただきたいところ。モテない女子・大村いちご(19歳)が、運命を変えるために周囲の迷惑をかえりみず話題の洋服を手に入れようという話。目的を達成したあとに、それまでの行動がことごとく裏目に出ていくのがスピーディーでよかった。あと、背景のイチゴのタネや大村いちご(19歳)の服の細かい模様を、いちいち手描きしているところに、作者の狂気性を見た。

・第5話 女の中の女の中の女
久我良(18歳)が「服を脱いだ女性に興奮する。ならば、女性の内臓を見たらもっと興奮するのではないか」という話をした後に、トラックの前に飛び出す加美馨(17歳)。これは「内臓グチャグチャだなぁ」と覚悟をしてページをめくらなければならなかった。まぁ、結局無事なわけだけど。加美馨(17歳)のスカートからチェック模様が消えている。これって、もしかして…。

・第6話 今日も私はこうして いつもつまらなそうな顔をしているあいつと つまらない話をして 日を過ごしていくのだ
一言で言ってしまえば、思い出泥棒。「慶太」と名前を連呼するシーンなど、病的要素濃い目の回。ただ、似たような第2話にくらべると少し劣っていることは否めない。それにしても、鳴田あおいさんは、なぜこの日に限って、こういう行動に出てしまったのだろう? 頭の中の関係だったらずっと幸せたっだのに。

・第7話 ひとりぐらし
男性が主人公という、めずらしい回。木下実(18歳)は心霊現象に対してなんとも思わないので、わけあり物件で優雅なひとり暮らしをしていたが…という話。子供じみたポルターガイストとか、テレビに映し出された文字が間違っているというのが、伏線としてキッチリ生かされているのが上手いと思った。

・第8話 星畑珠姫高校2年生17歳 華村奈々美高校2年生17歳 鬼ケ原樹里子高校2年生16歳物語
サブタイトルが、すべてを物語っている。3人のモテない女子高生が「どうすればモテるのか?」「男子にウケるには?」「カワイイとは?」みたいなことについて、ダラダラと語り合う。特にオチがあるわけではないが、コレでいいんだと思う。

・第9話 夏がはじまる
身長183センチで女子バレー部のエース。豪快な性格なので「男では?」と噂される右澤さん(中3)が主人公。思春期まっただなかで女子と話すと照れてしまう肥田くん(中3)に「実は男だって」と言われたあとの右澤さん(中3)のリアクションにやられた。サブタイトルとトビラからして、この2人には、なにか始まりそうだけど、次に顔を合わせたときも肥田くん(中3)は女々しくて、右澤さん(中3)は、男勝りなんだろうか?

・第10話 奴を見てる私を奴が見てる
栗山幹(高2)は、自分をストーカーしている相手を逆にストーキングして…という、オレがアイツでアイツがオレで、みたいな話。この時期になると読者も作風を分かってきているので、ひねりをくわえたオチから、もう1回ひねってみたという感じ。ラストで「右ラリアーとで いばいたったー」って言ってるけど『いばく』って、どこの方言?

・第11話 生きるということ
体育倉庫でひとり弁当を食べる輪田さん(高2)の前に現れた松井くん(高2)は『女性の食事する姿』に性的興奮を覚えるということを一気にまくしたてる。その勢いのまま置いてきぼりにされた輪田さん(高2)の振り回され感がハンパない。ただ『女性の食事シーンは、エロス』というところには、激しく同意せざるを得ない。

・第12話 ガガスバンダス
ウィキペディアで作品そのものよりも早くページが作られ、あえて掲載順を入れ替えてまで第1巻に収録することになった衝撃のエピソード。謎の遊び『ガガスバンダス』について知らない憐ちゃん(小5)と、その友人2人によるやりとりを、同じコマ割り同じ構図で3回繰り返すという実験的な内容。一見しただけでは手抜きに思えてしまうが、左側のページ中段の黒いコマを境に、それまでとはちょっと違うパラレルワールドに迷い込んでいる(憐ちゃんのランドセルの名字が 三本 → 三元 → 三下 と変化しているし、Tシャツの葉っぱの数も変わっている。キャミソールの娘のリボンも ストライプ → 無地 → つけていない という風に変化している)ということに気づいた時は背筋がゾクッとした。この話を読んで、単行本購入を決めました。

・かきおろし 空が灰色なので 「18歳の女のある日感じたこと」
描き下ろし、オマケ4ページマンガ。風邪が流行っている図書館で「自分以外がセキを使った暗号で会話しているのでは?」と疑念を抱く主人公。他の作家なら、ここからホラー展開に持っていくなと思った。伊藤潤二とか。



第2巻も12話収録だとすると、現在ストックが9話なので、単純計算で5月には発売できるはず。ほかにもweb連載していた『ドラゴンスワロウ』とかデビュー作の『破壊症候群』などを掲載すれば、早いペースで刊行できるはず。『鉄は熱いうちに打て』と言いますが、秋田書店側は、どういう判断をするんでしょうか? それも、やっぱりこの第1巻の売上次第かな。





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テーマ:漫画の感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2012/03/12(月) 19:12:39|
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