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晴耕雨マンガ

天国大魔境の小ネタ募集中/6月は、天国大魔境、ヴィンランド・サガ。

今年の読み切り漫画まとめ 2022

今年も例年通り、昨年12月から今年11月までの期間で自分が読んで面白かったと思う読み切り作品などをまとめていきたいと思います。基本的に、単行本化したものは除外しています。


○週刊少年チャンピオン 短期連載
今年チャンピオンに掲載された短期連載作品は、ドラマ化を記念した特別編のナンバステイゴールド/小沢としお(22+23~26号掲載)以外だとゼロ距離ライフ/椎葉裕巳(52~2+3号掲載)と正道、異世界転生ぶ/トダフミト(38~41号掲載)の2本のみ。なので、ベストは選ばないでおきます。そもそも正式連載も7本しか始まっていないので、誌面の膠着化が気になるところ。

○週刊少年チャンピオン 読み切り
今年掲載された読み切りは33本。出張版のおなかがへったらきみをたべよう/たばよう(25号掲載)、スピンオフのスピンオフ魔界の主役は我々だ!特別編 トントンの相談飯の夜明けぜよ/南郷晃太 津田沼篤 西修 コネシマ(51号掲載)などを除いたなかで良かったのは
なよ竹のナル/のりしろちゃん 幸田幸路(19号掲載)
幼馴染に屋上に呼び出され「これ告白か!?」と思ったら「自分は月から来た」と、まさかのカミングアウトが待っていた。ドッキリでは?と疑ってからオチまでの、感情の動きや表情の描き方が抜群だった。
Beautiful Girl/拓馬海(33号掲載)
自分の美しさに絶対的な自信を持っている霜月さん。イケメンの壽崎君に告白するものの、想定外の理由で断られてし
まう。……。この話だけでも満足感はあるのだが、よりまとまったボリュームで読んでみたいテーマ。美を現す画力も伴
っている。
カラフルボイス/小池健斗(36+37号掲載)
中学入学早々、となりの席になった女子は極度の人見知りで、腹話術を使って会話する子だった。パペットマペット姿のツカミからコメディだと思って読んでいたら、まさかこんな感動的な着地を見せるとは。保健室のシーンが最高。
ブレーメンには行けません!!/タケオキュージュウ(38号掲載)
路上ライブの聖地・ブレーメン広場での演奏を目標に掲げる、JK4人組のバンド。絵が抜群に可愛いし、童話にちなんだオチのつけかたも良かった。
ギャル忍/つみきどう(50号掲載)
任務を受けたベテラン忍者のパートナーに選ばれた新人忍者は、ゴリゴリのギャルだった。気配をなくす忍者と自己主張の激しいギャルという正反対の存在のギャップが、上手く機能していたと思う。
といったところ。ベストは
日比谷さんの刈り上げ/帯屋ミドリ(31号掲載)です。
隣の席の日比谷さんの刈り上げを触りたくてたまらない小松君。そこで自分も坊主頭にすることで、互いの刈り上げを触り合う展開に持っていこうとする。ちょっとしたフェチっぽさもあって、とても良かった。日比谷さん、たぶん襟足だけじゃなくて上のほうまで刈り上げているであろうというのが、さらなる高評価ポイント。
日比谷さんの刈り上げ/帯屋ミドリ

そして、今年のチャンピオンのハイライトは、禁欲生活を送るあまり全身がチンポと化してしまった板垣青年です。(210日900m/m以上/板垣恵介) あと、今年はえなこさんが表紙を飾る回数をカウントしていたんですけど、6回でした。思ったより少ない印象。去年が多かったのかな。
板垣ちんぽ


◯アフタヌーン
アフタヌーン本誌、モアイやコミックDAYSにアフタヌーンレーベルとして掲載された読み切りもまとめていきます。ケモ夫人/藤想(4、7、10月号掲載)など、出張版を除いたなかで面白かったのは
泳ぎつづける/春琉渡瑠(コミックDAYS 12/07公開)
河原で謎の卵をひろった少年たち。彼らのうちのひとりは、クラスの陰キャの女の子をイジるネタを探そうとする。鬱屈とした田舎の少年の話かと思っていたら、後半で少女の正体が明かされるシーンで持っていかれた。閉塞した空間を水槽に例えたのが上手い。
先生しっかりしてください/甘島伝記(モアイ12/07公開 グフタ1月号掲載)
父親の形見のバイクを壊されてしまった男子高校生。加害者の教師から金を回収しようとするが、フワフワした人当たりに翻弄されてしまう。ふたりの関係性の変化の描き方もいいし、夢のシーンの中に教師が出てくるところの雰囲気が面白い。絵も90年代っぽくて独特の雰囲気がある。
20世紀のアフタヌーン ~由利編集長のはなし~/沙村広明(2月号掲載)
創刊35周年記念読み切り。現在のアフタヌーンを形作ったと言われる、2代目編集長の由利耕一氏の逸話を、当時新人
だった沙村氏の目線で描く。こういった切り口で『アフタヌーン創作秘話』みたいなシリーズも展開できるかもと思っていたら、現在電子書籍のほうからは消されているとのこと。なにかトラブったのかな?
老杉の神様/村松昇汰(モアイ 02/07公開 グフタ3月号掲載 コミックDAYS 06/28公開)
山の神様(老いた杉の木)に毎日お祈りをしていた少女。流行り病を鎮めるために、人柱として奉げられることになってしまう。そのことがガマンできない神様が、元凶の別の神のところに同行して抗議する。それぞれの神の造形も素晴らしいし、相反する考え方の描き方も無理がなく、世界観にグイグイと引き込まれる。
神屋/山口つばさ(6、7月号掲載)
名門医大に首席で合格したものの、血が苦手なので現在は場末の個人医院で働いているタナカ。院長のお使いで行った神屋というお店でヨハンという人物と知り合う。別世界のような独特の空気が漂う店内の描写が素晴らしく、ヨハンの接客にハマり堕ちていくタナカの様子も耽美な感じで目がはなせなかった。短編集に収録されたけど、特例で。
ボールドを鳴らして/西原梨花(モアイ06/07公開 グフタ7月号掲載)
映画監督として活躍しているが、子供の対応が苦手な男。それは自分の娘に対しても同じだった。娘がハマっているストップモーションアニメを手伝うことで、距離感を計り直していく。映像づくりの豆知識もあるが、親子の関係性や父親の朴訥としたキャラも良い。モアイから消えている?
アウトライアー/ヨシノコウイチ(コミックDAYS 09/13公開)
仕事は順調。会社内でも上手く立ち振る舞っているつもりだったが、会議中に陰の実力者に歯向かう形になってしまい、閑職に飛ばされた主人公。しかし、そこで改めてモノづくりの面白さに気づくことに。お仕事物だけでなく、人生全体でも通用するテーマだった。
ベストは
電離層のゴースト/式森立人(モアイ05/07公開 グフタ6月号掲載)です。
偶然、無線を受信した主人公。その相手は、どうやら親に捨てられた子供らしい。なんとか居場所を特定し助け出そうとするが……。作者が管制官時代に体験したことが元になっているとのことで、SF系の話ながらどこか地に足がついた感じで、話運びも丁寧だった。真相判明のときの驚きもあったし、素晴らしい出来。
電離層のゴースト/式守立人

○ハルタ
今年度のハルタ(90~99号とテラン冬号)に掲載された読み切りは、ちょうど100本。そのなかで面白かったのは
チェンジマーク/内田晟(90号掲載)
いつものようにダラダラと大学に行った佐治は、山野さんという女性と知り合う。しかし、そこから日常におかしな変化が起こり始める。絵柄やタイムループの独特の雰囲気など、とてもレベルが高い。どちらかというとハルタではなく、ビームとかアックスっぽい空気感がある。
どうせ明日も同じ君/路田行(テラン 2022冬号掲載)
毎日ダイナーに来る客の秘密を知ることになった店員のマリ。死んだ恋人のための生活から、強引に抜け出させようと考るが……。序盤はコメディ風だったのに(急に壁の上にワープしたり)、中盤以降の転調具合が見事だった。特に「何も」のコマ。前向きなラストも良かった。
花が咲いたよ/空次郎(92号掲載)
園芸部の先輩からもらった種を植えたら、翌朝部屋がジャングルに。さらに翌日になると他の花が咲き、魚やアルマジロの実がなることも。いったい何の種なのか? 8ページだけど起承転結がしっかりしているし、オチも素晴らしかった。
龍の住処/吉田はく(93号掲載)
やがて龍になるというヘビに寄生されてしまったユイ(♂)。退治するために龍笛を買って吹いてみる。そこから雅楽にのめり込んでいく様子、小さな挫折、ヘビの励ましと、感情の揺れ動き方も後半の時間経過の演出も素晴らしかった。ヘビもシンプルなデザインなのに表情が豊か。
視線決戦ウインクキラー/西田心(94号掲載)
女子児童が頭部を爆破されるという事件が発生。同じ学校に通う琳太朗は、担任の美杉先生が犯人なのでは?と疑い始める。全編にわたるジョジョテイスト、ウインクで人を殺すというアイデア、琳太朗に同行する薫子の秘密の開示のタイミングと伏線の置き方、クライマックスの逆転の展開と、かなりの高レベル。
填匝町都市パン化計画/不死デスク(95号掲載)
パンを使った町おこしをしている町が舞台。町民がパン派とコメ派で対立しているシュールさ、ギネスを狙った巨大パンのグロテスクさ、メイン2人の甘酸っぱい関係性、それぞれが絶妙なバランスの上に成り立っていると思う。スタート銃の「パン!」とか、芸も細かい。
本を葬送る/児島青(98号掲載)
古本屋を営む男が、亡くなった男性の蔵書を買い取ることに。本の山を一冊一冊見ることで、会ったことのない人となりを推しはかるシーンが素晴らしい。特に、日が暮れて本が見えづらくなってからの一連の流れが最高。
ハルタのベスト、および
〇読み切り・オブ・ザ・イヤー
キッサコ/児島青(97号掲載)です。
仕事をズル休みしてしまった女性。不思議な子供に誘われて、路地裏の民家で煎茶をいただくことになる。これがデビュー作とは思えないほど絵も演出も達者だし、茶器やお茶の歴史の解説も丁寧。ラストのファンタジーのトッピングも見事。ものすごい才能を見せつけられた。
キッサコ/児島青

○ジャンプ系
主にジャンプ+から、他のジャンプ系で読んだ読み切りもまとめたいと思います。単行本化した(これからする)さよなら絵梨/藤本タツキ(ジャンプ+ 04/11公開)、オナ禁エスパー/竜丸(となりのヤングジャンプ 09/15公開 ヤングジャンプ43号掲載)などを除いたなかで良かったのは
ブシギャル/平田将(ジャンプ+ 02/17公開)
ある城の城主は、ギャルだった。絵柄や話の展開が真っ当な時代劇なので、そのなかにギャルが配置されいるのがいアクセントになっている。ギャル=傾奇者で、どう生きるか?という人生の話にもなっているし、ものすごいレベルの高い怪作だと思う。デコった刀が鞘に入らないギャグをやってほしかった。
飛んで福山/大山田(ジャンプ+ 06/08公開)
陸上に挫折し、無気力な日常を送っている福山。同じクラスのデブが告白している現場を目撃してしまう。何に対して努力するのか、そのことにどう向き合っているのか?ということの描き方が素晴らしいし、見開きのジャンプシーンは冒頭の立ち止まるところとの対比にもなっていてとても印象的なものだった。
死守れ日常系ヲ/一ノヘ(ジャンプ+ 08/07公開)
地球を襲う敵と戦う みい 。周囲の人間も気持ちよく接してくれているのかと思われたが……。友人の ゆう が“あるもの”を守るために戦っていることが分かってから、青春のエモくアツい友情ストーリーとしてのエンジンのかかり具合がすごかった。みいが戦うときの姿もバケモノじみているのが意外だったし、合間に挟まる4コマで日常を語っているのもいいアクセントになっていた。
おきばこ!!/あそびや わぁー(となりのヤングジャンプ 08/26公開)
ダンジョンに宝箱を設置するという仕事をしている、新人アマヤの奮闘記。まず、絵が新人離れしていて、ズバ抜けて上手い。特にクライマックスのミミックの出現シーンは圧巻。着眼点がすごいし、このまま連載化しても面白そう。
静と弁慶/三木有(ジャンプ+ 09/08公開)
薙刀の全国大会。小さいころから一緒に競技を続けてきた弁慶と静のふたり。最初は、男ながら薙刀を続け、演技の成績が優秀な弁慶の話かと思っていたら(演技の描写も良かった)、静のほうの気持ちが明らかになるモノローグからは、一気に2人の関係性の深みが増して、面白さが段違いに加速していった。
負けるな加持野さん!!!/石島利休(となりのヤングジャンプ 09/12公開 ヤングジャンプヒロイン掲載)
ある事情により、20で女子高生をやっている加持野さん。様々なギャンブルに手を出すものの、ことごとく負け続けるのだった。先生に金を借りる → 負けるのテンポ感が良い。いい意味で力の抜けたコメディ。JKギャンブルものとして連載できそう。
シルバーロック/三上カン(ジャンプ+ 11/06公開)
元ジャズドラマーの主人公。孫娘が音楽の道をあきらめかけていることから、重い腰を上げドラムを再開。そして若者のバンドに参加することになる。目のアップの見開きから始まる演奏シーンの迫力がスゴイ。さらに、その後の沈黙の意味合いが、孫が学園祭で感じたものとは逆の意味だという演出もスゴイ。
といったところ。ベストは
へのへのもへじと棒人間とパンツ/林快彦(ジャンプ+ 10/12公開)です。
自他から『棒人間』として認知されるという病気の佐藤。治すためには脳への刺激が必要だとして絵を描き始め、クラスで唯一棒人間なのをイジってくる分目さんに教えを請うことに。中盤の「好きだからだろぉ!!!!」からのエンジンのかかり具合が凄まじく、そこから一気にエンディングまで雪崩れ込んでいく。クライマックスの見開きで、キャンバスに顔の影が写るところが最高。
へのへのもへじと棒人間とパンツ/林快彦

○その他
そのほかに、定期購読している媒体以外で気になった読み切りは
かけ足が波に乗りたるかもしれぬ/菅野カラン(コミックDAYS 01/20公開)
家にいるのが嫌なので、離婚した母親のところへ家出する。その道中で、俳句の宿題をこなしながら。付箋にランダムに書いた575で適当に俳句を作っていくのだが、そのリズムが心地よい。段々と付箋を使わなくなっていくし。家族云々は悪くはないが、俳句部分だけでも勝負できるレベル。
マイリトルイレンジメモリー/砂川ユウ(コミックDAYS 2/24公開)
帰省した主人公。小学校のときの友人を見かけたことから、当時の思い出がよみがえる。特別なことは起こらないものの、現実と思い出とがつながる演出、引っ越すかもしれないという男子の心の葛藤などがよく描けていると思うし、ボールを投げることやオレンジといったモチーフの使い方も抜群に上手かった。
合体超人ビッグスパークル/ヒロタシンタロウ(くらげバンチ 04/29公開)
超人に変身し、怪獣を倒している主人公。しかし、一緒に変身する恋人から別れを告げられてしまう。執着しているのは恋人に対してなのか、それともヒーローになることなのか? そもそも怪獣を倒すことの是非は……? と当初の雰囲気からかけ離れた所へと着地する。モヤモヤを残す内容。
キャンパーダウンの伝説/池田73号(マグコミ 04/30公開)
ドラゴンレースのスター騎手だったものの、高齢を理由に家族から免許の返納をすすめられたキャンパーダウン。自分はまだまだできるということを証明するために、ドラゴンレースに復帰することに。家族の問題としても、若手レーサーとの対比としても、ともにレベルが高い内容。竜のライブリーのキャラも良い。
空を渡る生き物/コノシマルカ(週刊少年サンデー26号掲載 サンデーうぇぶり05/25公開)
地味な男子と派手な女子。クラスから浮いている2人がグッピーの飼育を通じて打ち解けていく。メインで扱う生き物がグッピーでラストでああいうことになるのに、このタイトルをつける作者のセンスがスゴイ。閉塞田舎ものとしても質の高い一作。
私のカレーを作りなさい/森もり子(webアクション 05/27公開)
Sの女性の命令でMの男がカレーを作ることに。手順に特に目新しいところはなく(素人の失敗ていど)、SMもアクセント程度(煮込む時間になんかプレーしている)なんだけど、どこか面白い。こういうかたちのカップルがいてもいいよね的な。
シビは寝ている/矢野満月(コミックDAYS 06/30公開 モーニング31号掲載)
飼い猫のシビが死亡。主な飼い主の彼女のほうは、シビを剥製にするという。それを受けて彼氏のほうは……。ペットの死という誰もが経験するであろう出来事。それを受けての心の揺れ動きの描き方が抜群に良かった。激しく泣きさけばなくても、心の中では様々なことが揺れ動いている。猫が冷凍庫で凍っている絵面もインパクトがあった。
いとをかし/白川すみれ(コミックDAYS 07/21公開)
タクシーに乗った一発屋の芸人。今後への不安を愚痴るが、その様子を聞いていたタクシー運転手の何気ない一言から……。漫才パートの面白さもだけど、終盤でお笑いおたくの友達が登場してからの怒涛の勢いもすごかった。
霊描いてみない?/照ヨウ(マグコミ 09/05公開)
漫画家志望の青年が、有名なホラー作家と出会う。彼らは霊を視ることのできる体質で、一緒に心霊スポットに取材に行くことに。どことなく、ジョジョや冨樫義博っぽさがあって、幽霊の行列のシーンなんかは独特の迫力があった。序盤は説明セリフが多いものの、それを補って余りある勢いがある。
リアルエステート/阿記江衣子(ゲッサン12月号掲載)
不動産屋で抜群の営業成績を誇る主人公は、他人の心を操るという超能力が使えた。ところが、その能力が効かない相手が現れる。「能力を使わなくても契約をまとめる」という主人公の意地、客の正体、シベリア送りの件など、バランスの取れたコメディ。物件紹介ファンタジーとして、連載まで行けると思う。

といったところ。また、読み切りではなく連載作品の中の1話としては、スキップとローファー/高松美咲 第39話「うだうだの帰り道」(アフタヌーン4月号掲載)が最高の出来でした。真に心を許し会える友達のなんと貴重なことか。結月と誠の話は、どれも素晴らしい。


といったところ。来年も、こういうことができたらいいと思います。よろしくお願いします。
















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テーマ:漫画の感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2022/12/01(木) 19:00:00|
  2. 読み切り感想まとめ
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今年の読み切り漫画まとめ 2021

今年も例年通り、昨年12月から今年11月までで自分が読んで面白かったと思う読み切り作品などをまとめていきたいと思います。基本的に、単行本化されたものは除外しています。

○週刊少年チャンピオン 短期連載
今年チャンピオンに掲載された短期連載作品は、9本。単行本化されているBEAST COMPLEX/板垣巴留(6~17号掲載)と彼女の音色は生きている/真田つづる(26~36+37号掲載)を除いたなかでベストなのは
THE HUMAN/はまやん(7~10号)です。
ドーピングが全面的に解禁され、細胞レベルの肉体改造が認められた『超人五輪』。しかし、主人公のマイクは、薬物を一切使わずに競技に挑んでいた。体を鍛えるのではなく精神を研ぎ澄まして前人未到の境地に至るというのは、以前掲載された読み切り作品にも共通するテーマ。この路線で、次回作にも期待したいところ。
THE HUMAN/はまやん

○週刊少年チャンピオン 読み切り
今年掲載された読み切りは、21本。特別編の魔入りました!入間くん カルエゴ外伝/西修(20号掲載)やコラボのバキ × ケンガンオメガ/サンドロビッチ・ヤバ子 だろめおん(44号掲載)などを除いたなかで良かったのは
かませ魔王ベリアルちゃん/こにすけ(12号掲載)
魔王ベリアルの正体は、小さな子供だった。そして対する女勇者ユリアは、クレイジーサイコレズだった。普通に百合っぽく終わるのではなく、そこから二転三転切り替わっていくのが良かった。強いママキャラがいるのも、チャンピオン向けっぽい。
自殺食堂/鈴木リュータ(30号掲載)
自殺の名所として知られる森の奥にある、一軒の食堂。そこを1人の男が訪ねる。美味しい料理を食べさせて自殺を思いとどまらせる、のではなく……というオチのつけ方が上手かった。
ラッパーBOY feat. オバケmc/那須永治(34号掲載)
ラップは好きだが引っ込み思案な少年・トライチが、ラッパーの霊に憑依され最強ラッパーにバトルを挑む。ラップとマンガの食い合わせは悪いと思うのだが『ここで韻を踏んでますよ』という説明は分かりやすかったし、見開きやオバケMCが消えたかも?と思わせるコマの雰囲気は良かった。
といったところ。ベストは
無吸血鬼は血を吸いたい/椎葉裕巳(41号掲載)にしたいと思います。
妖怪学校に通う柊木は、吸血クラスの中でひとりだけ血を吸うことができなかった。そこで幼なじみの芹沢に練習台になってもらうことに。キャラはまるっこくてカワイイし、吸血シーンのドキドキ感もなかなかのもの。数年前のチャンピオンって、こういう読み切りがたくさん載っていたよね。という懐かしさもある。最近始まった短期連載のほうにも期待したいところ。
無吸血鬼は血を吸いたい/椎葉裕巳

そして、今年のチャンピオンのMVPは弱虫ペダル/渡辺航の川田拓也です。近年、ここまで読者のヘイトを一身に集めたキャラがいたでしょうか? 次に登場したときにどんな感じになっているんだろう? 新1年生にも大きな態度をとるんだろうか?
弱ペダ・川田拓也

◯アフタヌーン
アフタヌーン本誌、およびモアイやコミックDAYSにアフタヌーンレーベルとして掲載された読み切りもまとめます。出張版の大人のそんな奴ァいねえ!!/駒井悠(5月号掲載)や月に吠えたンねえ/清家雪子(5、10月号掲載)などを除いたなかで面白かったものは
スカートの奥/岡井孝一(コミックDAYS 12/18公開)
歩道橋を利用していて盗撮をしていた中学男子2人は、年上の女性と知り合う。最初はフェチもの。そこから甘酸っぱい三角関係になり、そして新たなフェチが明らかになって……と怒涛の展開具合に圧倒される。カーテンをスカートに見立てたラストも上手いし、階段を模したコマ割りも面白かった。
ポチとボク/松冨まこと(4月号掲載 モアイ2/25公開)
たぁ君が拾った犬(ポチ)は、動物ではなくSM的なやつだった。そこから、なぜかポチと女御主人の恋愛物へとシフトしていくし、台車に乗っての演説(押しているM男2号の立場は?)、2人の復縁の様子がテレビ中継されていること、ポチの本名がアントニオなど、どこからツッコんでいいのかわからない独特のノリに翻弄される。怪作。
はじめてのおばけの飼い方・育て方/SUGINAMI(コミックDAYS 4/30公開)
両親に先立たれた少女は、通販で買った幽霊を育てることで孤独を紛らわそうとする。ホントかウソか分からない飼い方マニュアルの説明。ちょっと心配になるくらい妄信的な少女の姿勢など、独特なグルーヴ感があった。はじめはテキトーな受け答えで詐欺なのかと思われていたオバケ博士のほうもガチだったとは。
高峰くん -伽藍のヤモリ-/十十骨ちにく・ゆうち巳くみ(9月号掲載)
イラストレーターの十十骨先生がツイッター上で発表している『#高峰くん』というイラストシリーズを基に、ゆうち先生が脚本を担当。十十骨先生自身でコミカライズするという企画。イジメに苦しむ女子生徒の先生への報われない恋心に、それとなくアドバイスをする。のかと思っていただけに、中盤からホラーに転調し真相が判明する流れに意表を突かれた。
奏盤廻し/春琉渡璃(モアイ10/7公開 good!アフタヌーン11月号掲載)
工業高校で素晴らしい成績を残していた土井。しかし、1年下の女子が同じレベルの結果を残したことで、ストレスが溜まってしまう。旋盤加工という題材も目新しいし、自分で選んだ道 → 旋盤加工のように余計なものを削ぎ落すという構成も見事で、クライマックスのイメージシーンも素晴らしかった。
といったところ。ベストは
岸辺の夢/山嵜大輝(アフタヌーン3月号掲載)です。
画家の二宮は、毎晩見る夢に現れる女性のことを絵に描いていた。個展で出会ったコレクターの阿久沢によると、その女性は時代と場所を越え様々な芸術家のモチーフになってきたのだという。SFともホラーともつかない独特の世界観があってグイグイと引き込まれる。特に女性が姿を見せてからの展開は圧倒的だった。
岸辺の夢/山嵜大輝

○ハルタ
今年度のハルタ(80~89号)とテランに掲載された読み切りは、合計で91本。改題して連載化した百徳の幸/伊藤有生(80号掲載)や再録であるききみみ図鑑/宮田紘次(82~84号掲載)などを除いたなかで面白かったのは
キュリオシティ/林良時(81号掲載)
はじめて生命体が発見された惑星に、調査に赴いた生物学者の男。彼は、その地球外生命体を食べた罪で裁判にかけられることに。法廷でいったい何を語るのか? 生物学者のテンションの高い自己弁護から、ラストの食事シーンでストンと落とす落差が素晴らしかった。味とかをハッキリさせなかったのも良かったと思う。
裸足のマジカルホームタウン/木原悠里子(82号掲載)
家が新興宗教の総本山なので、周囲から孤立している小竹。それでもバイト仲間の祝さんとだけは、楽しく会話することができていた。よくある『ヤンキー娘だけが自分のことを分かってくれる』系の話にとどまらない、救いの話になっていると思う。
管理二課の一日/宇野山むじ(83号掲載)
会議中の不用意な発言から、マンション管理の仕事に左遷されてしまった主人公。簡単な業務内容かと思われたが……。先輩が手本を見せる午前中は、まだオカルト的な範囲に収まると思うが、主人公が先頭に立つ午後のパートは、不可思議さが加速して、頭が混乱してしまった。作中で詳しい説明がないのでよけいに頭がグルグルする。おかしいのは、主人公なのかマンションなのか?
おつかれフクちゃん/犬島ななこ(85号掲載)
国の政策により、猫のフクちゃんが新しく会社にやって来る。任されるのは雑用ばかりだが、指導担当の鈴木だけはフクちゃんの有能なスキルに気づいていた。はじめはお仕事コメディのような感じだったのが、次第に「見た目と能力は関係ない」という方向にシフトしていくのが上手かった。
全裸の夢と叶えるライン/樫木祐人(テラン 2021SUMMER掲載)
『湿原でピアノを弾く様子を全裸で見ていた』という夢の話をしたら、なぜか実現させることになってしまう。意味不明なことに全力を傾けるのも大学生っぽいし、実際に水上でキーボードを弾く姿のファンタジーさと、それを見て小学生時代の想い出がオーバーラップするシーンが印象的だった。
身軽坂を知っているか?/西田心(86号掲載)
教師のひとりがおかしくなったという噂を聞きつけた、安藤と金田の2人。その『身軽坂』という都市伝説の正体を探ろうとする。身軽坂の正体や攻略方法など、ジョジョっぽいサスペンスホラー的な展開が最高だった。この路線、少し前のハルタには何作かあった気がするけど、今は空き家かも。
対岸のメル/福島聡(87号掲載)
小学生の和気谷は、草むらでブツブツと話す白河メルと出会う。彼女は動植物だけでなく、幽霊とも会話できる特殊能力を持っていた。2人は、交通事故に遭った地縛霊の依頼を聞くことになる。何と言ってもメルのキャラが可愛いし、2人で探偵ごっこをする様子も微笑ましかった。
約束に暮れる/山田果苗(88号掲載)
高校時代の親友が亡くなる。生前に交わしていた約束を果たそうとするものの、そうしたら完全に彼女が死んでしまう気がしてなかなか実行に移すことができない……。『マイ・ブロークン・マリコ』のような、ロマンシス度も満足度も高い内容だった。主人公が、結婚式には着物で出席する派なのも、個人的にポイントが高い。
そして、ベストは
FUN FUN CUT/野澤佑季恵(89号掲載)です。
地味っ娘のヤツダさんが、おしゃれな美容室へ。そこはクラスメイトでギャルのマチヤさんの実家でもあった。教室内では話したことがないであろう2人のやり取り、ヤツダさんが髪型を変えようと思った理由など、なんとも言えない青春のみずみずしさにあふれていて最高だった。
FUN FUN CUT/野澤佑季恵

○ジャンプ系
主にジャンプ+から、ほかのジャンプ系で読んだ読み切りもまとめたいと思います。単行本化したルックバック/藤本タツキ(ジャンプ+ 7/19公開)などを除いたなかでよかったのは
底へ/カシミハル(ジャンプSQ RISE 2021WINTEER掲載 ジャンプ+ 4/10公開)
深海でスリープ機能から回復したロボット。覚えている指令のとおり、海底を目指すことに。記憶が回復するたび、行動の理由が明かされていく構成が上手いし、深海生物とのバトルも面白かった。くらげ人間もカワイイ。
ハイパーハードスペシャルミッション/静脈・依田瑞稀(ジャンプ+ 2/13公開)
気弱な性格だけど凄腕の殺し屋が、彼女の母親に挨拶に行くことに。しかし、同業者の母親は様々な刺客を差し向けてくる。いきなり車が喫茶店にツッコんできたり、高層ビルで死亡遊戯したり、テンションの高い展開が続くし、死なない君の設定や戦いぶりも面白すぎる。絵・ストーリーとも最高なので、続編を読んでみたい。
宗教的プログラムの構造と解釈/佐武原(ジャンプ+ 6/16公開)
AIに様々なことを学習させ、宗教の教祖に仕立て上げようとする大学の変人。女主人公のほうも、プログラムを組み上げるのにつき合っていく。宗教の成立過程や、教義にはどんなことを掲げればいいのか? いろいろと勉強になると同時に、物語としての面白さもしっかりとあり、読み応え抜群。最終的に最も優れたのが42番というのも良い。人生、宇宙、すべての答え。
僕とおとうさんについて/薄場圭(ジャンプ+ 8/17公開)
いい人ではあるものの、継父とは上手くいっていない秋字。ある日、その継父の宮さんの発案で、実父の墓参りに行くことになる。千葉から愛知までの道中の2人のやり取り、墓前であふれる秋字の感情と、家族の描き方が抜群にうまい。
バーン・トゥー・ラブ・ユー/加藤九郎(ジャンプGIGA 2021AUTUMN掲載)
照れると人体発火してしまう穂村。つきあっている彼女の風間さんに被害が及ばないように別れを切り出すが……。前半の温度差のあるからかい風ラブコメも、後半の怒涛の展開も常にテンションが高く勢いがあって良かった。クライマックスのキスシーンの演出も上手い。
恋のニノウチ/ピエール手塚(ジャンプ+ 11/17公開)
そこに一撃くわえれば相手を恋の虜にできるという急所が発見され、好きな相手には告白ではなく殴りかかることが定番となった世界。という設定が斬新すぎるし、メインとなる2人の独特な距離感のやり取りも面白い。クライマックスの組み手争いも迫力が抜群だった。
世界のおわりのペンフレンド/岩田雪花・松浦健人(ジャンプ+ 11/22公開)
災害が重なり、文明が崩壊してしまった世界。ある少女の楽しみは、文房具店跡に忍び込み試し描きの紙に好きなアニメのキャラクターを描くことだった。元文房具店主であり、そのアニメの監督でもある男との交流のシーンの空気感も、成長した少女が……という終わり方も良かった。カラーページが夕焼けであることも伏線が効いているし、かなりの高いレベル。
といったところ。ベストは
女子高生最強/小畠泪(ジャンプSQ RISE 2021AUTUMN掲載)です。
遥か未来。作業用のアンドロイドが、タイムカプセルを発見。それを埋めた女子高生の生態に興味を持ち、自分たちでその様子を再現してみることに。それまで単調な作業に従事していたアンドロイドたちの生活に彩りが生まれていく様子が素晴らしかった。終盤の見開き2連発も最高だった。
女子高生最強/小畠泪

○その他
そのほかに、定期購読している媒体以外で気になった読み切りは
副業魔法少女 サイドビジネス・マジカルガール/服部昇大(サンデーうぇぶり 12/29公開)
バイトをいくつも掛け持ちして、奨学金の返済に汗を流すワーキングプア女性のところに妖精が現れ、魔法少女になってくれるようにお願いする。しかし、その労働環境に女が物申す。魔法少女モノのお約束に真正面から突っ込んでいき、現在の労働状況にも苦言を呈するなど、切れ味が鋭い。服部先生のギャルもなかなか良い。
疑心暗鬼を生ず/紺野アキラ(ゲッサン2月号掲載)
眠る前にライトで部屋中の隙間を照らさないと眠ることができない男。霊感のある友人に相談してみるが……。一回いる状況を体験させることで、いないことを確信させるというやり方が(意図しているかどうかは別にして)上手い。「メガネをかけているのにバカ」「金髪なのに臆病」というセリフ回しも面白い。
白石さんの秘密/川井十三(ビッグコミックスペリオール4号掲載)
自称魔法少女で、地味な特殊能力を持っている白石さん。監視担当の公安の刑事と事件を捜査することに。シンプルな絵柄と、つかみどころのない白石さんのキャラクターが上手くマッチしていたと思う。50歳での漫画家デビューというのもすごい。
ラジオボーイとM16ガール/くさかべゆうへい(週刊少年サンデー12号掲載 サンデーうぇぶり6/28公開)
田舎に住む地味な高校生が、金持ちの爺さんを助ける。その流れで(やっぱり地味な)孫娘とデートすることに。ちょっと変わり者2人の何とも言えない空気感のやり取りが面白い。あらま、あれまの流れとか。美男子美少女じゃなくても恋愛していいし、特に派手なイベントがなくても恋人と言える。
野戦郵便局/池田73号(マグコミ 5/5公開)
国の発展に貢献してきた馬人。しかし、人間中心の社会になるにつれ居場所を奪われ、女馬人のカトリーナは戦地の郵便局で働くことに。馬人と人間、人間のなかでも少数部族など、さまざまな形の差別を描いていて、それに対してどうすればいいのかということが描かれている。適度な距離感は大切。
やすお/吉田博嗣(コミックDAYS 5/17公開)
家事代行ロボットを譲ってもらった主人公。雑な扱いをしているうちにロボットの性能が落ちてくる。後半で、やすおのシステムが明らかになる流れのブラックさがかなり強烈。最後まで「ありがとう」を言わない主人公のダメさ加減もいいアイロニーになっていた。
昼花火/野火けーたろ(コミックDAYS 5/31公開)
乳首をいじりすぎていたら、無茶苦茶大きくなってしまった主人公。その苦悩の様子がバカバカしいし、彼女の乳首も巨大化して、その2つがぶつかり合って昼花火に。って、どういうことだよっ! 何とも言えないバカバカしいノリで、最後まで突き抜ける。あと、彼女のほうの乳首だけ黒塗りされているのか。
忍耐サトリくん/岡田索雲(webアクション 6/18公開)
他人の思考を読み取ることができるサトリくん。その能力のせいでクラスから浮いているので、担任教師が話を聞こうとするのだが……。真面目そうな先生のどす黒い心の声が面白すぎた。わざとゲスを演じ普通の生徒の心の声に抵抗をなくすためなのかと思われたが、ただのサイテー野郎だったとは。(電子書籍化しているけど、単話売りはセーフという判断で)
巨神姫戦記/きしだしき(くらげバンチ 6/18公開)
超巨体を駆使して魔獣と戦う姫。そのバトルの迫力もすごかったし、お付きの男性の、姫のそばにいる or 武器を仕上げるかの葛藤から、完成した大剣を渡す見開きが最高だったし、連載で読んでみたい設定。
時間跳躍式完全無劣化転送装置/山素(コミックDAYS 9/2公開 モーニング46号掲載)
フランスにシェフ修行に行った友人と再会した主人公。その家には、開発中のタイムマシンがあった。2人の関係性と、未来にしか物を送れないタイムマシンを上手く絡めたストーリーの見せ方も上手いが、途中のフィラデルフィア現象が起きた時の妙な緊張感が興味深かった。サンマとケーキでポテトサラダに。
といったところ。そして
〇読み切り・オブ・ザ・イヤー
すくすくサイクル/雨隠ギド(ビッグコミックスピリッツ 23号掲載)です。
学校ではクラスを上手くまとめきれない新人の先生に、家では認知症気味の祖母との同居が始まり、なんとなく心にモヤモヤを抱える鈴木さえちゃん。学校の畑に植えたきゅうりの手入れを通して、2つの問題が良い方向へと進んでいくストーリー展開は流石。祖母の「よくよく人を見な、判を押すのははやいってこと。」というセリフが印象的。
すくすくサイクル/雨隠ギド


といったところ。来年も、こういうことができたらいいと思います。よろしくお願いします。











テーマ:漫画の感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2021/12/04(土) 15:00:00|
  2. 読み切り感想まとめ
  3. | コメント:2

今年の読み切り漫画まとめ 2020

◯はじめに
今年も残り1ヶ月を切り、さまざまなマンガ関係の賞が発表される季節になってきました。でも個人的に気になるのは、その選考対象がどれも『単行本』だということ。雑誌に掲載されたりWebで発表されたマンガが、すべて単行本化されるわけではありません。そこで、昨年12月から今年11月までで自分が読んで面白かったと思う読み切り、および単行本化されていない短期連載作品をまとめてみたいと思います。

○週刊少年チャンピオン 短期連載
シリーズ連載である水曜どうでしょう~大泉洋のホラ話~/大泉洋・星野倖一郎(1~17号、47~52号掲載)と、単行本化されたチャンピオンズ~週刊少年チャンピオンを創った男たちの物語~/魚乃目三太(2019年46~2020年4+5号)を除いた短期連載は疾走少女/八百橋ナオキ(39~42号掲載)と、ぼいるふろー!/平平なすこ(40~47号掲載)の2本のみ。なので、ベストは選ばないでおきます。単行本化されない短期連載というのは、もう時流に合わないのかも。電子書籍化でも単話売りでも、いろんな方法はあるわけだし。

○週刊少年チャンピオン 読み切り
今年掲載された読み切りは、16本。出張版の鳳仙花/髙橋ヒロシ・齋藤周平(26号掲載)、WORST外伝 ゼットン先生/髙橋ヒロシ・鈴木大・山本真太朗(49号掲載)、連載化したはぐれ勇者の異世界バイブル/那珂山みちる(15号掲載)以外で良かった読み切りは
マドロミ/はまやん(34号掲載)
いじめっ子に復讐するため体を鍛えるのではなく、夢の中で超能力を磨いた少年・ボン。見事にリベンジ達成かと思われたが……。超能力が使える理屈にもマンガ的な説得力があるし、バクを模した師匠のキャラデザも、連続殺人鬼が登場する後半の急展開具合も面白かった。
ぼくらのVR/キリキテツ(45号掲載)
オンライン授業が一般化し、VR世界の高校に通うことも珍しくなくなった近未来。三村・秋名・佐治の3人は居残りを命じられ、それぞれのスケッチを描くことに。暴走したセキュリティソフトからデータを奪い返すシーンも、その後にリアルで実際に顔を合わせる展開も良かった。芦田愛菜が年上の女優というのも細かい演出。
といったところ。ベストは、文句なしで
青春シャウト/菊地祥代(13号掲載)です。
失恋のショックから河原で石を投げている姿を見初められた高瀬千夏は、やり投げを始めることに。投擲競技自体がマンガでは新鮮なテーマだし、絵も見やすく上手い。1号から始まった短期連載にも期待したいし、ぜひとも正式な連載作品として誌面を飾ってほしい。
青春シャウト/菊池祥代

しかし、だいたい月1ペースでの読み切り作品の掲載というのは、随分と減ったなという印象(例年は30本前後はあった)。
今年のチャンピオンのハイライトは、吸血鬼すぐ死ぬ/盆ノ木至 の人気投票企画です。総投票数が20潤2溝400億3187万2259無量大数1158不可思議9994那由他7923阿僧祇5925恒河沙3394極17載227正5013澗7636溝3129穣701杼8436垓3237京5482兆1365億2080万2682票ってどういうことだよ!?
吸死 人気投票


◯アフタヌーン
アフタヌーン本誌、およびモアイとコミックDAYSにアフタヌーンレーベルとして公開された読み切り(ほとんどが四季賞入賞作品)もまとめたいと思います。出張版の空挺ドラゴンズ/桑原太矩(3月号掲載)や惑わない星/石川雅之(7月号掲載)出張版などを除いた中で良かったのは
父娘の島/ショウ(good!アフタヌーン2月号掲載 モアイ1/7公開)
天才少女が開発したワープ装置で、父親と一緒に無人島に不時着してしまう。はじめはインドアな天才少女がサバイバルで苦戦する話かと思いきや、次々と真実が判明しストーリーの枠組みが次第に明らかになっていく演出が素晴らしかった。絵も上手く全体的にレベルが高い。
目をあけてねれるよ/佐倉旬(good!アフタヌーン5月号掲載、モアイ4/7公開)
不思議ちゃんの彼女の願いを叶えるために、いっしょに悪魔を召喚することに。タイトルの意味が分かる流れからの、後半の展開も迫力があって良かった。悪魔の造型も面白い。
Emigrants/増村十七(コミックDAYS 4/17公開)
宇宙で派遣社員をしながらマンガを描いている女性と、地球でカナダへの移住を目指す女性。それぞれが挫折の時を迎えたときに、2人の人生が一瞬交錯する。そのシーンの演出に言葉を失ってしまう。絵の雰囲気も独特。素晴らしいSF。
いつか帰郷をくちずさんで/佐武原(6月号掲載、モアイ4/25公開)
四季大賞受賞作。大きな地震が来ることが予知され、多くの住民が避難を始めた田舎町。主人公の女性は、あえてそこに留まり住民のために全力を尽くす。地震予知やAIといった進んだ技術と滅びゆく地方という組み合わせは新鮮だったし、選評でも言われていた通り、集中連載くらいのボリュームで読みたい内容。
骨壷の小鳥ちゃん/藤原ミナモ(good!アフタヌーン7月号掲載、モアイ6/5公開)
孫が手作りした骨壺がお墓に入らなかったことから、お爺ちゃんの遺骨をどうするかで親族がもめる。次々と別の埋葬方法が提示されて、シチュエーションコメディとしてちゃんと面白いし、最後にホッコリさせるシメかたも良かった。親族たちのキャラも濃く、文句のつけどころが見つからない。
といったところ。ベストは
手指の鬼/鏡ハルカ(1月号掲載、モアイ11/25公開)です。
人に捕まった鬼が戯れに語る『手指が欠けた人』を食べなかった理由。異種間&歳の差のある、親愛以上恋愛未満な関係性は、刺さる人には強く刺さる強烈で華麗なものだったと思う。絵柄もそれを表現するのに相応しいし、エンディングの切り取り方も見事。
手指の鬼/窓ハルカ

そして3月号がベスト表紙賞です。いつもは後ろに隠れる雑誌ロゴを前に持ってきたことで不気味さがアップしている。
表紙賞2020

○ハルタ
今年ハルタに掲載された読み切りは、作者25組で39本と少なめ。そこから今年も、事実上の不定期連載であるつきたて!餅小町/佐藤春美(71、73、74、78号掲載)と、番外編であるめんや/柴田康平(77号掲載)を除いたなかで良かったものは
箱に響く/天野実樹(72号掲載)
学校のマドンナ的存在の本城マイカさんは、素のキャラを放送部の南有馬に知られてしまったことから、放送部の校内ラジオに出演することに。トークのエンジンがかかってからのラジオパートはテンポも良く、ジムに行くことで多くの疑問を解決しようとする天丼が効いていたり、かなり面白かった。79号から始まった新連載にも期待。
Mr.Jack's NIGHT CLASS/マー、ハリッタルン、ヒロヒク(72号掲載)
イケメンで人気はあるが、授業はつまらない英語のジャック先生。彼が夜に行う特別授業をボイコットするため、生徒たちは幽霊の噂を流すのだが……。全体的なコメディのテンポと、クリーチャーのグロさのバランスが絶妙。マレーシア人でも、こういう『日本の学校風景』を描けるんだなと思った。
馬の王/加藤清志(73号掲載)
愛馬イザベラに乗って逃走する“馬の王”ウィレムと、追手のベルツハイムの激しい戦い。この作者らしい独特のノリとケレン味たっぷりのセリフ回しを堪能させてもらった。そして、ウィレムの逆転の一手もド肝を抜かれた。「愛馬にやることか!! 馬の王!!」。
姫と忍/木原悠里子(75号掲載)
山あいの里に住む人々は、みな手先が器用で物作りに長けていたが、姫様だけが不器用で役に立つことができなかった。ある嵐の日、城に盗みに入った忍びと出会った姫は、中枢部ともいえる『分離室』という場所へ向かう。絵柄もふくめ全体的にはホンワカムードなのに、中盤で「ん?」と思わせ、見開きで一気に開放する構成が素晴らしすぎる。
アリスの小さな夢のあと/梅ノ木びの(79号掲載)
童話作家のルイス・キャロルに写真を撮ってもらったアリス・リデルが見た、不思議な夢。ドードー鳥と一体化?したキャロルの語る、子供が大人になる瞬間の話もどこかつかみどころがなく、本当に夢を見ているようなフワフワした内容だった。でも、しっかりと面白い。
といったところ。ベストは
グルン・バエラ/森薫(71号掲載)です。
悪魔ながら白い肌なのを気にするマルグラが、ご主人であるルルベキア公爵の魔力を浴びることで、自分も黒い肌になれるのでは?と考える。まず全ページに渡っての書き込み量が異常。スクリーントーンを使っているのは悪魔の肌くらいなもので、服の刺繍や壁の装飾など、ほぼ全ての部分が手書きだと考えると気が遠くなってしまう。達人の緻密な技術の結晶。
グルン・バエラ/森薫

○ジャンプ系
主にジャンプ+から、ほかのジャンプ系で読んだ読み切りもまとめたいと思います。単行本化したにくをはぐ/遠田おと(ジャンプ+ 12/30公開)などを除いた中でよかったのは
その淑女は偶像となる/松本陽介(ジャンプ+ 1/30公開)
元トップアイドルだが、現在は素性を隠しお嬢様学校に通う姫宮桜子。そこに、インディーズアイドルの若菜あるみが転校してきたことから運命が動き出す。丸っこいキャラはカワイイし、ダンスシーンの迫力もあった。ストーリーの運び方もスムーズで、かなり高レベルの内容。
かいだんし/大山田(ジャンプ+ 5/25公開)
肝試しに行ったときに幽霊にとり憑れてしまった主人公。学園祭のステージで怪談として発表することで、幽霊に成仏してもらおうとする。ホラー系だがダークな胸糞展開にならず、キチッと事実の調査をしたり感動方面に展開させたのが良かった。語りでストーリーを紡いでいくというのもなかなかの腕前だと思う。
女子高に転校しました!/藤田かくじ(ウルトラジャンプ7月号掲載)
女子高に転校した主人公。キャッキャウフフな女の園のような学園生活を期待していたが、待っていたのは闘いのワンダーランドだった。可愛いキャラとガチなプロレス技のギャップが素晴らしい。もうちょっと新しめの技も見たかった。
ドクターマーメイド/遠山花近(ジャンプ+ 8/7公開)
食べると万病に効くという噂のある人魚の肉。ある老人が超高額で落札するが……。老人の本当の狙いや、人魚の考え方など、常に予想外の方向に展開していく構成力が見事だった。人魚が老人の角質を食べるシーンや水中で呼吸を受け渡すところなど、フェチさもグッド。
わたしの親友/猗笠怜司(ジャンプ+ 11/23公開)
自殺した親友の霊にとり憑かれてしまった主人公。家族のサポートもあり、除霊に成功するが……。ラストで真相が判明する流れ、カラーページの使い方が絶妙。短いページながら、構成がしっかりと決まっているし、ムダなポイントがない。
といったところが印象に残っています。ベストは
地球記録0001/暗森透(ジャンプ+ 11/8公開)です。
宇宙飛行士の男は、月で地球外生命体と出会う。地球の環境に適応できない宇宙人には地球のことを、宇宙開闢以来の存在である宇宙人からは未知の宇宙のことを、お互いに教え合う。交流を深めてきた2人だが、宇宙飛行士の任期満了が近づく。ほとんどが2人の会話シーンに割かれているが、それでも世界の広がりのようなことは感じられるし、ラストのタイトル回収も見事。ハリウッドで映画化してほしい。
地球記録0001/暗森透

○その他
そのほかに、定期購読している以外の媒体で気になった読み切りは
たたセン/広瀬べろせ(モアイ1/28公開 イブニング4号掲載)
鷹崎先生の悩みは、彼氏で同僚の佐々木先生が自分では勃ってくれないこと。しかし、教育実習生の烏丸さんには敏感に反応するのだった。冒頭のインパクトの強い見開きから、身もふたもないオチまで、要らないシーンがない。“ちょうどいいブス”を描けるのも、ひとつの才能。
美術部のふたり/冬虫カイコ(コミックメテオ 2/26公開)
クラスメイトや親の理解は得られなくても、絵に打ち込んできた2人。しかし、そのうちの1人が美術の賞を取ったことから、周囲の人間関係や2人のあいだのバランスに、微妙な狂いが生まれる。その部分の描き方が繊細で、心にモヤモヤが残る落としどころがも上手い。
ラン(アウェイ)、シスターズ/くまぞう(コミックBRIDGE 3/6公開)
自由奔放な性格で好きなことばかりしてきた姉と、その陰で親からの期待を受けて真面目に生きてきた妹。妹が家出してきたことをキッカケに、2人は写真撮影旅行に出る。姉妹間の本音のやり取り、常にコマの間をたゆたう煙草の煙、前向きなラストと、とても良い内容。
さよなら蒙古ひだ/拝島ハイジ(くらげバンチ 7/3公開)
自分の顔の欠点が気になり整形することにした女性。そのときから、他人の顔の欠点も気になってしまうように。その部分の感覚の変化の描き方も良かったし、彼氏との口ゲンカの後という作品の終わらせどころが予想外で、意表を突かれる幕切れだった。
ウンナ母斑/sacco(新人コミック大賞サイト7/31公開、スペリオール19号掲載)
出産されるまで、天界で赤ちゃんの面倒を見る天使のセサル。十ヵ月を越え、ついに赤ちゃんが生まれる時が来るのだが……。繊細で優しい絵柄ながら、後半の怒涛の展開に心が引き裂かれそうになる。新人でこういうストーリーを描けるということが、素直にすごいと思う。
ホット アンド コールドスロー/平庫ワカ(コミックBRIDGE 8/4公開)
コールスローを作っているときに、家から出ていった夫。それを受けて、妻は様々な考えが頭の中を駆け巡る。パン祭りの皿や、TV通販で紹介している脚立までもが伏線として働く見事な構成。中盤の血まみれシーンは作者持ち前の熱量と疾走感があったし、後半に病院でちゃんと話し合って夫婦の結論を出すのも良かった。
だんしゃり/小野寺こころ(コミックDAYS 9/10公開)
同居する父と祖母からイビられ、自分に自信を持てずにいた主人公。自分をゴミ袋に入れる見開きが衝撃的だった。そのまま暗いテンションで話が進むのかと思いきや、彼氏ができてからの逆転具合が最高。結婚報告で意地を通したのも良かった。「シャンプーの良い香りがするよ!」と「しょーちゃんのやからかってにさわらんといてぇ」というセリフが良かった。
天国までひとっとび/ゴトウユキコ(webアクション 9/25公開)
事故で死んでしまったクラスメイトが、幽霊となって主人公の前に現れる。好きだった先生に代わりに告白してほしいと頼まれるが……。この作者らしくストーリーの運び方が上手いし、大きな声を出す先生が本当は嫌な人じゃないということをみせるのが抜群に上手い。
眠たい浅瀬/華沢寛治(スペリオール22号掲載)
クラスのイケてる女子からキスされてしまった、地味な古川さん。その理由は……? もうひとり男子を加えた状態での、感情の行き違いの振れ幅が大きくて胸がザワザワしてしまう。「好きな人の好きな人に、先に手を出す」という行動が、裏返るオチつのつけ方が上手い。
根津/大野莉楠(コミックDAYS 11/19公開)
主人公女子のひそかな楽しみは、不幸体質の根津君をこっそり見守ること。しかし、ある日占い師から「(根津君が)明日危ない」と言われ、不幸避けにもらった数珠を渡そうとするのだが……。モノローグのテンポ感や言葉選びが心地よいし、はじめはミニマムな話だったのが、次第に大掛かりになっていく展開も素晴らしかった。オチのつけ方も上手い。
行き届いた会話/江口侑輝(コミックDAYS 11/21公開)
強く依存していた友人が死んでしまい、傷心の主人公。しかし、AIを利用したチャットアプリを介して、死んだはずの友人が話しかけてくる。友人とはもちろん、主人公と他者との距離感の描き方が上手いし、屋上ですべてにケリをつける場面も一歩踏み出すラストも良かった。
といったところ。そして
○読み切り・オブ・ザ・イヤー
俺は沢口靖子のことを何も知らない/石川実(怒嵐哮)(コミックDAYS NAO ジャンプルーキー! マンガラボ! 12/12公開)です。
ふとしたことから、沢口靖子に興味を持った主人公が、彼女のファンのJK(初対面)と一緒にロケ現場を見学に行く。いきなり沢口靖子の似顔絵で開幕したり、出オチかと思いきや終盤では、前半の細かいセリフがフリとして効いているという見事な構成。ただ作者は、六角精児と谷亮子には謝ったほうがいいと思う。新人投稿用アプリとはいえ、3媒体同時公開とは珍しい形。
沢口靖子

また、読み切りではなく連載作品の中の1話としては、ゴールデンカムイ/野田サトル 第228話 シマエナガ が、強烈なインパクトを残しました。濃霧によりアシパさんたちとはぐれた杉元が、道中で出会ったシマエナガという野鳥とサバイバルするのだが……。いよいよ行動開始だ!というタイミングからの豹変ぶりが怖ろしすぎる。主人公だし「不死身の杉元だ!」と、決め台詞まで言ったのに。いつものトビラ → 1コマ目のコンボはギャグになっているけど、1話かけてやると悲劇になるということが分かった。

といったところ。来年も、こういうことができたらいいと思います。よろしくお願いします。













  1. 2020/12/05(土) 15:00:00|
  2. 読み切り感想まとめ
  3. | コメント:0

今年の読み切り漫画まとめ 2019

◯はじめに
今年も残り1ヶ月を切り、さまざまなマンガ関係の賞が発表される季節になってきました。でも個人的に気になるのは、その選考対象がどれも『単行本』だということ。雑誌に掲載されたりWebで発表されたマンガが、すべて単行本化されるわけではありません。そこで、昨年12月から今年11月までで自分が読んで面白かったと思う読み切り、および単行本化されていない短期連載作品をまとめてみたいと思います。

○週刊少年チャンピオン 短期連載
今年、掲載された短期連載は8本。単行本化したTVアニメ創作秘話~手塚治虫とアニメを作った若者たち~/宮﨑克・野上武志(8~15号掲載)などを除いたなかだと、個人的には
熊を殴りに行く/ノーザンアッパー(44~46号掲載)を推したいと思います。
熊を殴りに行く/ノーザンアッパー
自分に勝ったチャンピオンを襲った熊を倒せば、自分のほうが強いことになるんじゃね?という単純な発想から、本当に体を鍛えて北海道に熊を殴りに行く。話が単純明快だし、熊の後もトドやオオカミと対決する熱さと勢いがあった。再登場していただきたいところ。

○週刊少年チャンピオン 読み切り
今年掲載された読み切りは、作者27人で42本。単行本からの再録であるREVENGE TOKYO/板垣恵介(13、16、20、26、30号掲載)や、創刊50周年記念リバイバル読み切り作品 (6~43号掲載)を除いた中で良かったのは
また姫がさらわれた/吉田達弥(9号掲載)
何度も魔王にさらわれてしまうので、すっかりモンスターたちと意気投合してしまったお姫様が、敵地での暮らしを満喫してしまう。
ローンウルフ/奥嶋ひろまさ(26号掲載)
車イスのおじいちゃんと、その孫が大金を持っていることを知ったヤクザが仕掛けてくる。しかし、この2人が……。孫のほうは予想できたが、祖父のほうもとは……。介護版の子連れ狼。
ナミダドライブ/掛丸翔(33号掲載)
卓球の試合で高校生相手に苦戦を強いられる小学生選手。あることでスイッチが入る。泣き虫+小学生+卓球は、日本人が刷り込まれている黄金の方程式。
イシュメリウム/荒井俊太郎(48号掲載)
連続不審死の原因は、見ると感動のあまり『自殺してしまう花』。全体的に淡々と進むだけに、花が描かれたページのインパクトが強い。
異世界セールスマン世渡さん/吉谷光平(49号掲載)
魔王に様々な商品をプレゼンすることで、進軍を食い止める世渡さんの見事なセールストーク。話の構成レベルがとても高い。
といったところ。ベストは、
鮫神鉄拳ジャッポ/綿貫琢己(29号掲載)です。
鮫神鉄拳ジャッポ/綿貫琢己
治安が最悪で銃の使用が当たり前の国。主人公のジャッポは尊敬する父親の言葉を守り、銃に頼らない強い男になろうとしていた。絵や話の構成などは、かなりの高レベル。テーマを『対銃』に絞ったのも、功を奏していると思う。
あと、今年のチャンピオンのハイライトは、ジュニオール/灰谷音屋のトリックFK。MVPは、もういっぽん!/村岡ユウの南雲安奈。流行語大賞は「幸せ行きの最終列車」(山口貴由 13号のインタビューにて)。ベスト表紙賞は43号(電子版)です。
ジュニオール FK(11号)南雲安奈MVPシャイ表紙

◯アフタヌーン
アフタヌーン本誌、およびモアイとコミックDAYSにアフタヌーンレーベルとして公開された読み切り(ほとんどが四季賞入賞作品)を合計48本読みました。出張版のキョムノヒガン/オズノらいおん(4月号掲載)や機械仕掛けのジュブナイル/久慈進之介(5月号掲載)などを除いた中で良かったのは
マイシー・マイサマー/水戸市子(good!アフタヌーン18年12月号掲載、モアイ2/22公開)
実在の詩人・イェイツをモチーフに、アイルランドに伝わる妖精伝説を繊細に描く。はじめは、いわゆる『ひと夏の経験』的なものかと思ったが、ラスト数ページでガラッと状況が一変するのが見事。構成が上手い。
こっちむいて!ポニーテール/真木しう(good!アフタヌーン2月号掲載、モアイ3/29公開)
子供のころのある事件で髪型を変えてしまった女の子に、ポニーテールに戻してもらおうと主人公が奮闘?する。『ポニーテール部』とか全体的にはバカバカしい空気感なのに、しっかりと青春要素もある。
すいか/森とんかつ(good!アフタヌーン7月号掲載、モアイ6/7公開)
新任の教師が、学校の百七不思議のひとつであるスイカという少女に翻弄される。ギャグとホラーが融合しているのだが、そのときの『HEY!』みたいなアオリ?が面白い。コメディ枠として最高。
鉄紺の春/竜丸(コミックDAYS 8/16更新)
死んでしまった友人の持ち物から新品のコンドームを発見した友人2人が、彼が好きだった女子をレイプすることで弔いにしようと考える。全体的に青春期のやり場のないリビドーがあふれている。
Letter/近藤汐音(コミックDAYS 11/1更新)
妖精などを見ることはできても、サンタは見たことのない少女。そこで手紙を使って正体を探ろうとする。世界観というか作品の空気感が素晴らしい。作者はこれで19歳とは。驚き。
各期の四季大賞受賞作が良いのはもちろんなんですが、個人的には
ナミダノアイランド/芥川ミサヲ(モアイ3/15更新)をベストに推したいと思います。
ナミダノアイランド/芥川ミサヲ
環境悪化によって月軌道上で人類が暮らしている世界。それでも地球の海に強いあこがれを抱く主人公。しかし、仕事やプライベートで上手くいかず……。体内世界に舞台が移ってからは、鯨が飛び出す見開きなど、見ごたえのあるシーンばっかり。絵も良いし、新しい一歩を踏み出すシメも素晴らしい。

○ハルタ
今年ハルタ、ハルタオルタに掲載された読み切りは作者61人の75本という驚異的な数字に。そこから、事実上の不定期連載であるつきたて!餅小町/佐藤春美(60~61、63~65、67~68号掲載)や単行本に収録された太陽をおみやげに/鶴淵けんじ(66号掲載)などを除いた中で良かったものは
山田運送株式会社/渋谷圭一郎(60号掲載)
友達と長年続けてきたクリスマスパーティーに、ある種のむなしさを感じていた泉は、帰り道に不審人物を目撃したことから、ある仕事を手伝うことになる。泉の考え方が段々と変わっていき、トビラとラストのページで表情がガラッと変わっているのが良い。
リトル・ホテリエ/荒木美咲(61号掲載)
小学生ながらホテルの支配人も務める天堂のぞみ。バリバリと仕事をこなす一方、友達との関係に悩んだりもする。設定も面白いし、のぞみやベルマンの樋口をはじめとする従業員のキャラも面白い。
タートルネック先生と/高江洲弥(62号掲載)
先生に10年越しに好意を伝え続けるハルコ。彼が抱える事情を知っても、その気持ちは変わらないのだった。タートルネックを着続けていた理由よりも、娘のアキラを交えての3人の関係性の描かれ方が上手い。
まつ毛のない人魚/須川佳(63号掲載)
娘にせがまれ、水族館に人魚を観に行った母親。美人ばかりを集めたマーメイドショーの歪さに強烈な違和感を覚える。そして、若いころに見た荒々しい野生の人魚との対比のシーンがとても印象的。いろいろと現代社会への皮肉も込められている。
秘密の花園/百名哲・冨明仁(64号掲載)
漫画家仲間に誘われて、はじめておっぱいパブに来た富野。そこで接客についた女の子がDVを受けているということから、助けようとするのだが……。両先生の持ち味が化学反応を起こしていて、抜群に面白かった。特に冨先生の描く百野が、そのまますぎて凄かった。
琥珀の鳥の夢/丸山薫(ハルタオルタ掲載)
表向きは優秀な教育者の義父から虐待を受けていたジャイルズは、琥珀の中に閉じ込められていたハーピー(?)にエーレと名前をつけて、心の拠り所としていた。見開きの美麗さや寓話的なオチのつけ方など、さすがの実力という感じ。
夢見の沙汰も君次第/夏田祐美(69号掲載)
夢の中で出会ったミラは、夢の中の物しか食べることができない。朱太郎は、その手伝いをすることに。飛び降りるシーンが、前半と後半で2人の表情が違っていたり、ミラが水面に映った太陽を食べるところなど、印象的なシーンが多かった。
といったところ。ハルタのベスト、および読み切り・オブ・ザ・イヤーは
愛の焦土/吉田真百合(ハルタオルタ掲載)です。
愛の焦土/吉田真百合
地球侵略真っ最中の父親から、ゴッホの『ひまわり』をお土産として受け取った兄は、すっかり魅入られてしまう。心配した弟は、実際に地球のヒマワリ畑に行くことを提案する。本物のヒマワリに囲まれた絵画の『ひまわり』という見開きから、まさか一気にダークな方向に転調してしまうとは。インパクト大の内容。

○ジャンプ系
今年はジャンプ系の作品も多く読んだので、かんたんにまとめたいと思います。
魔法少女れおの性活/高山としのり(ジャンプ+1/4公開)
悪と戦う魔法少女のサポート妖精が、な夜なセックスするし、複雑な四角関係を抱えている。そもそも、興奮すると体から出るジュエルは何のメタファーなのか? キメ所の絵も良いし、ヒロインが終始ツッコミ役に回っているのも面白い。
友達の友達は友達じゃない/さざなみ游(ウルトラジャンプ4月号掲載)
転校先で生徒会長と仲良くなった主人公。しかし、その親友からは露骨に嫌悪感をぶつけられてしまう。女3人のビミョーな距離感。それから、タイトルの本当の意味が分かるラストが素晴らしい。
山田キキ一発/龍幸伸(ジャンプ+4/27公開)
国から怪獣退治を任されている女子高生。戦闘スーツを忘れたために制服姿で戦うことになり、下着が見えそうになることと好きな男子への気持ちで上手く戦うことができない。絵が良いし、バトルの躍動感もある。。
color/峰浪りょう(ヤングジャンプ38号掲載)
恋愛に興味を持てない無性愛者の主人公。仕事もうまくいかず孤独を感じていたときに、小学校の頃の親友から連絡がくる。性の不安定さや社会との距離感に悩みながらも、最後は安住の地を得られたようでなにより。現代的なジェンダー感。
イン・ザ・グラウンド/竜丸(ヤングジャンプ50号掲載)
思春期ゆえの不安定さから下着ドロを働いてしまった少年。被害女性の弟(無職)との交流から、なんとか心のバランスを取ろうとする。難しいテーマながらも、キチンとエンタメしている。
といったところが印象に残っています。ベストは
リインカーネーション/鳴名ガオ(ジャンプSQ RISE 2019 SUMMER掲載)です。
主人公は転校早々、幽霊少女に気に入られることに。無理してクラスになじもうとする様子と、自然に幽霊と話す様子の対比が良かった。そして全てが明らかになったあとの、2人きりの映画館でのやり取りが最高。続編として、シレっと映画紹介コメディが始まっても驚かない。
リインカーネーション/鳴名ガオ

○その他
そのほかに、定期購読している以外の媒体で気になった読み切りは
おナスにのって/岩田ユキ(漫画アクション 2018年24号掲載)
生まれる前に死に地獄で18年過ごした主人公が、お盆に母親のところに帰れることに。現在の母親の生活ぶりや、なぜ堕ろさなければならなかったのか?といったことが明らかになり、全体的に切ない空気に包まれている。「もしも……」のページと、お供のナスの健気ぶりも良い。
いとしくておいしい/鯨庭(トーチweb 1/18公開)
龍神に生贄に捧げられる少女。しかし食べられるわけではなく、1年限定で龍神の世話をすることに。少女はその期間で龍神に惹かれ心を通わせていく。終盤での双方の気持ちの揺れ動き方が凄まじかった。躍動感のある龍の描写も見事。
俺とわたし、そしてあなた/高田ローズ(ハツキス7号掲載、コミックDAYS2/16公開)
元から女性に嫌悪感を持っていた主人公が、病気にかかり完全に女性の身体に。新スタートを切ろうとしたときに、男の親友や告白してきた女子と再会し、いろいろと心が揺れ動く。気持ちの変化が繊細に描かれている。
さがしてよ/トウテムポール(モーニング15号掲載)
ひさしぶりに同窓会に出た主人公。小学校のころ憧れに近い感情を持っていた友人の消息がつかめなくなっていたことを知る。彼の行方を追う過程で、それまで知らなかった様々な側面が知れるのもいいし、全体的な淡々とした語り口も良い。
五月に隕石、六月には京都/安彦晴(ビッグコミックスペリオール9号掲載)
クラスの人気女子3人を眺め、漫画にして楽しんでいた底辺男子3人組。しかし、そのうちの1人はガチで恋をしていた。絵に若干のクセはあるものの、話の構成、修学旅行の班決めで勇気を振り絞る様子が良かった。唯一彼らの趣味を知っているメガネ女子が、実はいちばんイイ女だと思う。
Player/田沼早和(モアイ5/28公開)
第1回e-cup準大賞。幽霊と陰口される少女が、ある少女と出会う。ある程度正体は読めてしまうが、もうちょっと「2人でいるんだけど……」的なシーンが欲しかった。でも、青春の瑞々しさはあった。
moon light for/幌山あき(ヤングマガジン28号掲載、コミックdays6/10公開 )
第80回ちばてつや賞 ヤング部門大賞。結婚相手の連れ子との距離感に悩む主人公。その子が真面目に習っていたピアノを突然辞めたいという。気持ちを打ち明けるシーンがとても切ない。「もうパパはいないのに どうして私は下手くそなピアノ弾いているんだろう」なんて、泣きたくなる。
義父の息子/金賢智(モーニング32号掲載)
第75回ちばてつや賞 一般部門大賞。大学受験直前で轢き逃げに遭った主人公は、その轢き逃げ犯の息子として生まれ変わる。恨みを晴らすため子供ながらに復讐を考えるのだが……。絵が抜群にうまいし冒頭のキモ男が実は……という構成も見事。転生×タイプリープという手あかのついてそうな題材でも、ここまで描くことができるとは。
つばめティップオフ/ワタヌキヒロヤ(コミックメテオ8/14公開)
長身女子の後輩と、低身長先輩のバスケもの。話の空気感や2人の距離感が良い。バスケ描写も、ターンひとつに絞っていて読みやすくなっている。先月から連載がスタート。
察せませんズ/路田行(くらげバンチ9/6公開)
彼氏から別れ話を切り出された彼女。いろいろとネガティブな思考が駆け巡るが、踏ん切りをつけるために、思い切って理由を聞くことに。絵の雰囲気も語りのテンポというかノリが軽快で素晴らしい。
美術室の化物/やまのべ(サンデーうぇぶり 10/21公開)
幼いころから絵を描いてきたが、親からのプレッシャーにより、賞を獲るための技術ばかりを磨いてきた主人公。高校で自由に絵を描いている天才と出会い、いろいろと衝撃を受ける。天才のほうがケガした利き腕を使わずに描いた絵のところだけカラーになる演出が良い。
エンペラマンさつがいけいかく/梶川岳・福山暁(ゼノン編集部 11/8公開)
親から虐待を受け世界の破滅を願う2人の少女が、怪獣を倒すヒーローを負けさせる計画を練る。絵が抜群にうまいし、話の運び方も、2人の考え方が180度変わるラストも見事。




といったところ。来年も、こういうことができたらいいと思います。よろしくお願いします








  1. 2019/12/07(土) 15:00:00|
  2. 読み切り感想まとめ
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今年の読み切り漫画まとめ 2018

◯はじめに
今年も残り1ヶ月を切り、さまざまなマンガ関係の賞が発表される季節になってきました。でも個人的に気になるのは、その選考対象がどれも『単行本』だということ。雑誌に掲載されたりWebで発表されたマンガがすべて単行本化されるわけではありません。そこで、昨年12月から今年11月までで自分が読んで面白かったと思う読み切り、および単行本化されていない短期連載作品をまとめてみたいと思います。

○週刊少年チャンピオン 短期連載
今年、チャンピオンに掲載された短期連載作品は、僕の心のヤバイやつ/桜井のりお(15~18、53号掲載)  魔法少女サイト Sept/佐藤健太郎&宗我部としのり(17~19号掲載)  刃牙外伝 疵面/板垣恵介&山内雪奈生(20~24、36~37+38号掲載)  開田さんの怪談/木々津克久(19~27号、36~40号、47~49掲載)の全部で4本。単行本が発売した、これからされるものばかりという状況なので、ベストは選ばないでおきます。これは編集長交代による方針の変更なのかな。

○週刊少年チャンピオン 読み切り
今年チャンピオンに掲載された読み切りは、作者22人で26本。別チャンで連載化した先生ー!〆切ですよ~/浜岡賢次(15号掲載)や、出張版のフルアヘッド!ココ ゼルヴァンス/米原秀幸(42号掲載)などを除いた中で良かったのは、過去に戻って完璧な人生をやり直す? それとも恋を取り戻す?ブンキテン/田中歩(2+3号掲載) 超高速で日本全国に荷物をお届け片瀬つむりの神速便/八音橋ナオキ(6号掲載) 生徒会長として絶大な信頼を集める主人公の真の目的とは!? 謀略のパンツァー/古田朋大(22+23号掲載)  攻撃できない空手少女が、トラウマの元となった相手と再会する少女ら、空が故/碓井春佳(32号掲載)  クラスメイトだけど主人とメイドの関係でもある2人を描いたオムニバスメイドでメイトのメイカさん/佐藤ショーキ(41号掲載) といったところ。ベストは
幼なじみは全知全能/山本アヒル(21号掲載)です。
幼なじみは全知全能/山本アヒル
ふとしたことから、全知全能の存在になってしまったヒロインが、幼なじみにあるひと言を言わせようと能力を遺憾なく発揮する。目標とやっていることのスケールのギャップが大きすぎて最高でした。
あと、今年のチャンピオンのハイライトは、やはりなんといっても鮫島、最後の十五日/佐藤タカヒロ ということになるでしょう。
鮫島

○別冊少年チャンピオン
今年別チャンに掲載された読み切りは、作者32人で46本。連載化したインコンプリート アニマルズ/平沢バレンティーノ(2、4、6月号掲載)以外で良かったのは、言い伝えや迷信を具現化できる能力を持つがゆえに他人と距離を取ってしまうが……ホシノナルカミ/古田朋大(2月号掲載) 謎の料理の魅力にとりつかれてしまった主人公、その秘密の作り方は?オルメヌール/中村ゆきひろ(5月号掲載)  侵略してきた宇宙人を鹵獲して兵器に改造。それが因果応報を生むことに星の兄弟/荒井俊太郎(8月号掲載)  極度の機械解体欲を持つ少年が、捨てられた冷蔵庫を修理して戦う機動家電レイゾウコ/佐藤周一郎(9月号掲載)  女子トイレの個室に隠れて「見つかるかも」という興奮を味わっているドMの末原くん。終始、異常性を見せつける内容僕と僕の女王様/大谷優(11月号掲載)といったところ。ベストは
My Sweet Boku Zukin/杉浦洸(4月号掲載)です。
My Sweet Boku Zukin/杉浦洸
空襲から逃げ惑う少年は、避難する人々の防空頭巾の様々な模様に注目していた。その中に大きな目玉模様の物を見つけ、自分の物にも目玉を描く。逃げる人々の塊を大蛇や首長竜に例えたり、全体に流れる独特の空気感が素晴らしい。

◯月スピ
今年は『月刊!スピリッツ』の読み切りもまとめたいと思います。掲載されたのは新人を中心に25本。熊本復興企画のレポート漫画であるおんな南阿蘇鉄道ひとり旅/YASCORN(5月号掲載)を除いた中で良かったのは、自分そっくりのゾンビに生活を代行させたら、そっちのほうが上手くいってしまい……不完全ゾンビ/山原中(5月号掲載) 終始淡々とした描写が続き、狂気性が満ちている誰にとってもどうでもいい人/石田和人(9月号掲載) 長渕みたいな男が、好きな娘のために演劇部で代役(お姫様)を演じるよせる男/大内優(11月号掲載) 盲目の美女と殺人鬼がひとつの部屋に。息詰まる攻防戦in the dark/二宮正明(1月号掲載)といったところ。ベストは
痴女の夜/矢寺圭太(3月号掲載)です。
痴女の夜/矢寺圭一
閉塞的な街に飽き飽きしていた3人組の前に、全裸でバイクに乗る痴女が出現。訳も分からず、チャリで追跡する。異様な疾走感と青春のリビドーにあふれていて、とても素晴らしい。

◯アフタヌーン
今年から『アフタヌーン』もまとめていきます。掲載されたのは作者12人の14本。コミックDAYSからの出張版である寄生獣リバーシ/太田モアレ(8月号掲載)とおみやげどうしよう?/西園フミコ(10,11月号掲載)とけもらいふ/雪本愁二(12月号掲載)を除いた中で良かったのは平凡なサラリーマンの藤ノ木と海外で危険な仕事に従事している赤岩。2人が不定期に電話でとりとめのない会話をするたったひとつのことしか知らない/本田(5月号掲載) 1年前に死んでしまった幼なじみの最期の願いを叶えるため、その弟とともに山に分け入っていく。自殺をするに至った事情や、熊の出る山にわざわざ入っていく理由など、話を展開させていくのが上手い蛇の山/窪田航(6月号掲載)といったところ。アフタヌーンのベストおよび
〇読み切り・オブ・ザ・イヤー
不朽のフェーネチカ/竹良実(7月号掲載)です。

生前から聖人認定確実と噂されるマザー・ドロテア。その隠された顔を探ろうと、アレハンドロという記者が彼女の過去を探る。はじめは聖人になるためなら汚いことにも手を染めているのかと思われたが、取材を通して段々と時間をさかのぼっていき、ドロテアの真の考えが明らかになる過程が素晴らしかった。電子版で発売されているので、厳密に言えば対象外なのですが、特例を設けてでも評価したいほどの傑作です。
来年度からは、モアイで発表されているものも読んでいきたいと思います。

○ハルタ
今年、ハルタに掲載された読み切りは作者29人で53本。単行本化されているシャーリー・メディスン/森薫(52号掲載)や事実上の不定期連載であるゲームしたっていいじゃん/高橋拡那(51~54、56、58~59号掲載)などを除いた中で印象に残っているのは、魔女の呪いを解くために、自分の体の一部を差し出す王女。命そのものを犠牲にしたときに新たな呪いが発動するマリヤたちの祈り/後藤(50号掲載) 鬼の鬼ヶ島さんは、テスト勉強のし過ぎでうたた寝。角が机にブッ刺さってしまう。女性キャラの表情や体つきが良い君の前ではいつも赤鬼/仁科彰太朗(51号掲載)  肉体関係を持ったアシスタントが、そのことをマンガにしてしまう。作者特有のヒリヒリ感がほとばしるなれた手つきで ちゃんづけで/ゴトウユキコ(52号掲載)  復讐の鬼と化した忍びの激闘。でも、水遁の術ってそういう意味じゃなくない?忍びのエン/加藤清志(52号掲載)  鬼のお嫁さんの角にアレルギー反応を起こしてしまった旦那さん。体質改善に取り組むお嫁さんアレルギー/三輪皐月(56号掲載) といったところ。個人的には、ここ数年にくらべて当たりの読み切りが少なかった印象。その中で選ぶとすれば、期待を込めて
雲の子くららちゃん/紙島育(54、55号掲載)
雲の子くららちゃん/紙島育
をベストに推したいと思います。髪の毛が雲になっている、くららちゃん。感情や環境の変化で、その形状が様々に変化する。前作『メドゥーサ嬢ニューサイト』など、いいキャラを生み出しているので、次回作を楽しみに待ちたいと思います。

○その他
その他、定期購読している以外の媒体で気になった読み切りは、
I SPY/遠藤達哉(ジャンプSQ3月号掲載)
好きになった相手は凄腕のスパイ。マタギの祖父に育てられたJKが野生の勘で接触をはかろうとする。ギャグのはさみ方が小気味よく、とても面白い。さすがの腕前。
真夜中ワンダーさんぽ/鳶田ハジメ(コミックポラリス 3/15公開)
主人公と飼い犬だけに見える、影のような謎の生命体たち。その存在に戸惑いながらも、夜の街を歩く。雰囲気がとても良い。
マサラ追走曲/えすとえむ(モーニング15号掲載)
食をテーマにした連作のうちの一編。日印ハーフで苗字が王子なのに、カレーが嫌い!? かつての同調圧力への反発と、それが無意味な抵抗だったことに気づく流れがいい。
樫村一家の夜明け/岡村星&沙村広明(週刊漫画ゴラク5/11・18号掲載)
30歳引きこもりが意を決して部屋を出たら、父親がヤクザに襲われていた。結局、終盤の父親のガンアクションと解散宣言の勢いに全てを持っていかれる。
アリスと不思議な国のうさぎ/中野ユウスケ(ヤングジャンプ27号掲載)
日本では、道端にいる小さいウサギを捕まえて食べるのが当たり前。イギリスからの留学生アリスが、その謎の真実に巻き込まれてしまう。オチも不気味でよい。
Fool in the room/大槻順平(モーニング29号掲載)
引きこもりが外に出てみたら、学生時代に好きだった子が風俗で働いていることを知る。全編にわたってバカバカしい勢いがあって最高に熱量が高い。途中で一回、ショーシャンクの空になる。
BURN THE WITCH/久保帯人(週刊少年ジャンプ33号掲載)
ロンドンの闇に跋扈するドラゴンを退治しろ! 画力やキャラメイキング力の高さは流石。ラストで『BLEACH』とつながる演出も見事。
白ヒゲとボイン/板垣巴留(週刊漫画ゴラク 9/21号掲載)
作者初の人間漫画。サンタクロースが風俗嬢にプレゼントを渡す理由は? ストーリー構成力は相変わらずの高さ。たしかに、この内容は少年誌では描けない。
カッコヨリグレット/タカノンノ(くらげバンチ9/14公開)
小説を書いていたが、いまは地元で働き奨学金を返している女のところに、大学のころ憧れていた女が転がり込んでくる。青春は終わったかもしれないけど、夢をあきらめるにはまだ早い。夜の公園での女2人のやり取りが素晴らしい。
吐露/三卜和貴(ヤングマガジン42号掲載)
自分の吐しゃ物が、好きな娘の姿に。やりたい放題していたところ、本物のほうから告白を受ける。微妙な関係性を海に例えて見事に描いている。




来年も、こういうことができたらいいと思います。よろしくお願いします。











テーマ:漫画の感想 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2018/12/02(日) 15:00:00|
  2. 読み切り感想まとめ
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