晴耕雨マンガ

8月は、少年ラケット、ダンジョン飯、ゴールデンカムイ。

スペシャル 第2巻の感想




1巻が黄色で、2巻がピンク。『スペシャル』第2巻の感想です。



・第21話 覇権キャンペーン
夏休み。葉野は会藤と筑前の逢瀬を目撃してしまい、藤村とともに煩悶とした感情を抱くことに。なんとか恋愛ではなく、通常の『つねり関係』ではないかと思案を巡らせていたのとは裏腹、いつのまにか木に縛り付けられ喉元をつねられているという展開のスピーディーさがたまらない。あと、藤村の顔の輪郭が眼鏡のレンズ部分だけ微妙に歪んでいるという、細かい演出が。

・第22話 習性を責めよう
引き続き夏休み。魚を見物しに行く道中、津軽は放牧中の牛を眺める担任の浦先生と出会う。はじめは『牛の所有欲』などについて軽妙なトークを繰り広げていたものの、次第に話題は浦先生の大人の恋愛事情へとシフトしていく。外出時に手袋&マスクを装備する潔癖症ぶりを、相変わらず完全スルーされる津軽が面白い。伊賀も葉野も登場しない、初めての話。

・第23話 運ばれやすさゆえに
葉野は、図書館前で大石と出会う。聞けば、夏休みの宿題を終えるまで幽閉されており、久方ぶりの外出なのだという。しかし、安寧の時間も束の間。大石家の人間によって連れ戻されてしまう。覚悟を決め、捕獲された宇宙人さながらの後姿も面白いが、終始大石が「おたつさん」と呼ばれているのも何とも興味深い。下の名前は、たつこ とか たつよ とかなのだろうか?

・第24話 踏まずに進め
前話の経緯を、谷に確認した葉野。大石‐谷はつき合っているのか?という疑問を皮切りに、スマートフォンを借りた藤村と、恋愛トークに花を咲かせることになる。当の両人には想い人はおらず、他に議題に上がった筑前‐会藤組にしても、それぞれのクセが強すぎるので、どのカップルも上手くいく未来が見えない。

・第25話 感触
伊賀、帰還。再会を喜び近づく葉野だが、伊賀の足元にいた猫によって即座にアレルギーが発症してしまう。普段冷静な場面の多い葉野が、終始アレルギー対応に追われオロオロしている姿が新鮮だったし、やおら登場した伊賀父への対応もぞんざいになってしまうのも面白かった。ツッコミ役が不在だったためか、いちばんコメディ濃度の高いエピソード。

・第26話 扉
猫アレルギーで、顔面崩壊状態の葉野が帰宅。家にいた女性に事情を説明し、その後は些細な日常会話をしながら夕食を共にする。最初は若い母親か?嫌、姉か?と思っていたが、ラストで女性は帰宅してしまう……。家族ではないのか……? そういえば葉野の家庭が描かれたことはなかったし、転校の理由も不明のまま。実は作中最大の謎は、葉野家なのか?

・第27話 眼の往来
ひさしぶりに『槍』を握って鬱憤を晴らす伊賀。葉野も攻撃を促されるが、木の洞の中に仕込まれたカメラを発見。そこから推論を展開する。しかし『槍』の正体が、読者にとって謎のままなのはモヤモヤする。葉野ですら、山中に放置されていることに疑問を呈するほどの知識があるというのに。あと「動画観」という日本語は、ココが初出だと思う。

・第28話 奪ってから奪う
夏休みの話は、ここまで。谷は級友・城下と釣りに向かう道中、カツラを被って変装した大石を発見する。ここからは、眼力で城下を排除したり変装力を高めるために眼鏡を拝借したり、大石の谷に対する甘えっぷりを堪能するという趣向の内容。第24話では藤村は知らないようだったが、少なくとも城下は2人の関係を正しく認識しているんだな。

・第29話 心臓にはシェルター
夏休み明け、登校初日。藤村は毎年宿題に一切手を付けないことで知られていた。今年も例外ではなく、罪悪感から逃れるため心を殺す。城下の宿題を強奪しようと目論むものの上手くいかず、浦先生に連行されることになる。一度「身内を人質にとられたら~」と話をふられたときの、葉野の淡白なリアクションが少し気になる。家族に執着がないのか?

・第30話 満ちねば足りぬ
夏休みが明け2日経っても、会藤が登校せず。様々な憶測が飛び交うが、葉野と伊賀は下校中にあっさりと会藤を発見する。しかも、筑前を尾行中の。会藤からは家族とつねりが絡んだ複雑な事情が説明されるが、2人がやんわりと見捨てたように、致し方なしか。これで、筑前-会藤のストーリーラインは終焉を迎えたという認識でいいのかな?

・第31話 すべての得がたき馬
まず、サブタイトル上段の3コマ「浦先生――っ」「電話ですよー」「警察から」の破壊力が高すぎる。この巻のハイライトと言っても差し支えないと思う。浦先生の考えは『馬を使った通勤は可能か?』というものだった。さっそく大石に馬の調達を依頼する。しかし、度し難い潔癖症を押してまで、浦先生の馬の世話係に立候補するとは、津軽の愛も本物だな。伊賀 → 津軽 → 浦先生 → 動物という図式か。

・第32話 訊ねるまで
伊賀のヘルメットの謎に迫る話・前編。伊賀のヘルメットに鳥の糞が直撃する。葉野は、それを拭くことを拒否され、予備の物との交換の現場にさえ立ち会わせてもらえなかった。伊賀に下校の誘いを受け、席を立つまでの僅かな間が興味深い。そして、いよいよ葉野が禁断の質問を口にする。

・第33話 訊ねてから
伊賀がヘルメットを被っている理由、及び怪力の原因についての説明がなされる。それ自体は簡素に済まされ、話の本筋としては勇気を持って質問した葉野の、その後の気持ちの不安定さ。廊下で安堵の涙を流すシーンが何だか切ない。あと、伊賀の「さよちゃんの謝ってる先に あたしの怒りはないんやで!」というセリフは、様々な局面で心を救うことができると思う。

・第34話 踏んだその尾を眺めては
前話で葉野の落涙場面を目撃した城下。彼は、泣いている人を見ると恋するという、異様な性癖の持ち主だった。ということで、谷を通じ大石から葉野の彼氏の有無を聞き出そうとするが……。この話は、谷が葉野のことを好きだと勘違いした大石と、藤村が葉野と恋の話をしているということを知った伊賀の、嫉妬の重なりが見事な構成。

・第35話 生えたまえ
前話の流れを受けて、伊賀、大石がそれぞれ葉野に揺さぶりをかけてくる。特に、葉野に恋人を作らせて、谷の所有権を確かなものにしようと目論む大石がいじらしく思えた。そして、葉野には転校前に彼氏がいたらしきことを窺わせる発言もあるのだが、大石家の情報網はいったいどの程度の規模があるんだ?

・第36話 懐詐欺
城下の葉野への恋心に、いち早く勘付いた谷口(本編中では名前を呼ばれず)。城下の噂を流布し、葉野の良い心情を得ようとする作戦を実行に移すが、悲しいかな谷口はトークのスキルを持ち合わせていなかった。一応この2人が葉野&伊賀の相手という役割を担っているんだろうけど、正直ちょっと荷が重いと思う。

・第37話 音だけ
改めて、葉野の元カレについての事情聴取。及び、伊賀との趣味の会話。第32話からここまで一連の流れの上に話が展開されてきたが、それがひと段落ついたという内容。伊賀が「あたしの好きなものを~さよちゃんに好きになって欲しいねん」という台詞を受けて、葉野の背後に『どごぉっっ』という書き文字が出現するのだが、これは『キューン』と同義と考えてもいいものか。

・第38話 知り合いが変なことしてる
前話からの流れで、第5話で登場した煙突見物に行くことになった伊賀と葉野。道中の失言(と本人は思った)の汚名返上を兼ねてか、煙突と重なる伊賀の姿をスマホで動画撮影してあげることに。このとき背後の草むらから、第26話で登場した葉野の同居人が姿を現す。この巻の後半は、葉野の過去の恋愛が取り上げられたし、葉野家の過去というのが、話の肝要な部分を形成しているのかもしれない。

・おまけ漫画
第31話を受けての、谷と津軽の男の会話。作中では様々な男女の可能性が提示されているが正直、浦先生‐津軽がいちばん難易度が高いと思う。




葉野の同居人、彼女が作品の枠組みを壊していく気がする。





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  1. 2017/07/15(土) 20:26:20|
  2. 平方イコルスン
  3. | コメント:0

スペシャル 第1巻の感想



平方イコルスン初の長編作品『スペシャル』の第1巻が発売されました。トーチwebにて14年8月から連載したものがまとめられています。
また、kindleでは分冊版が3冊発売されています。



・第1話 大事な頭部
都会より田舎の高校に転校してきた葉野さよ は、常にヘルメットを着用している伊賀こもろ が尋常ならざる怪力の持ち主だということを、厚意から貸したシャープペンシルが粉微塵になって返却されたことから知るに至る。『豪の者』とか『横溢』とか『隣の新しい人』とか、相変わらずの語彙センスがさく裂している。

・第2話 持参の鬼
季節は夏。伊賀は「神」と呼ばれる扇風機に涼を求め、会藤がこぼした豆を藤村は掃除機で吸い取り、炊飯器では米が炊かれる。教室にあるこれらの家電は、すべて大石の私物なのだという。普通はここから先生が来てひと悶着。というのがパターンだが、そうはいかない展開に「…OK、なの?」と思ってしまう。

・第3話 油のおもむき
担任教師の車がガス欠になってしまったので、右手一本で押してあげる伊賀。しかし、帰路はどうするのか? ガソリンのニオイが好きだという藤村の提案で、同僚の百瀬先生から譲渡してもらうとするものの、使用していたのはハイオクだった。さらに大石が校内に常備しているガソリンもまたハイオクだった。終盤に「ハイオクやないか!」を連発する藤村に対する百瀬先生の意見が面白い。

・第4話 豆の当然
筑前の前でぶどうを食してしまった葉野は、恐ろしいほど強い力でつねられてしまう。その魔の手は、豆好きの会藤にも向けられる。第2話でも、会藤が豆をブチまけたときに背後に筑前がスタンバっているあたりが見逃せない。あと、34ページ最後のコマの、上下をベタに挟まれた筑前は、何らかの形でグッズ化していただけないものか。

・第5話 好きな形
休日。葉野は伊賀に誘われて昔のレンガ工場の煙突を観に行くことに。「棒状のものが重なっているのが好き」という、共感できそうでまったくできない絶妙なラインのフェティシズムの設定と、46P右下のコマの空気感がなんとも言えない。あと、この話ぐらいから、葉野の眉頭がギザギザし始めている。

・第6話 属し下手
教室備蓄用に、洗濯機を持ってきた大石(運搬は伊賀)。しかし、床下収納からは古い型の洗濯機がもう一台出てきた。その帰属先として、大石のためならなんでもする谷が指名されるが、担任教師が教室にくるまでに置き場所を確保することは至難の業だった。ということを、ノリツッコミする谷のテンションの高さが素晴らしい。

・第7話 かきかねて
伊賀が腕を蚊に刺されてしまう。見る見るうちに腫れ上がり、いかにも痒そうな風体に。怪力の伊賀は自ら掻くことはできないので、葉野は自分の出番では?と思うが……。道路標識に擦り付けるという痒みへの対処法も斬新だが、藤村が語った「ノスリと柿が空中でぶつかって、おっさんもマジギレ」という話の子細を聞きたい。

・第8話 順路
前話の続き。標識を捻じ曲げてしまった伊賀は、手続きのために警官に連行される。帰路についた葉野は、藤村から伊賀のことについて訊くものの、要領を得た答えは得られなかった。ここから『葉野が伊賀に怪力の由来を尋ねる』という、物語の縦軸が定められることに。その詳細が明らかになるかは定かではないが、質問をするというのが、このマンガのクライマックスになりそう。

・第9話 兵糧不足
男子トイレから『ぽりぽり』と豆を食べる音がしているのを、葉野が発見。豆の残骸は教室の床下収納から続いていた。大石は『備蓄用のいい豆』を会藤に盗み食いされたと確信。筑前を召喚し、制裁のつねりを加える。その執行中に会藤は豆を食べる喜びで、痛みとの相殺を計ろうとする。伊賀が登場しない唯一の話。

・第10話 浮きヘル
伊賀が、津軽という男子に恋心を抱いていることが、大石から語られる。津軽の姿を見ると、照れから伊賀のヘルメットが浮いていしまうという事象に葉野が並々ならぬ興味を抱くが、ことごとく大石によって阻止されてしまう。あと、津軽が教室の入退出時にその都度手袋を着用している潔癖症だということを、作中でまったく触れられていないというのが面白い。

・第11話 聖性持ちの狼藉娘
葉野は、伊賀から大石に盾突いたことを嗜められる。そして10話で取っ組み合ったあとに、大石から伊賀に関する情報の開示を拒否されたときのことを思い返す。そして、取っ組み合いが男子トイレの前で、あらぬ言葉を言っていたことから津軽から軽蔑されてしまうのだった。個人的には『聖性持ちの狼藉娘』と言う言葉の語呂の良さが、大変好み。

・第12話 骨より髪
大石の発案により、伊賀の爪を使って散髪が可能か確かめることに。被検体に選ばれた藤村は、失敗した場合『遺骨をお気に入りのガソリンスタンドに散骨』されることを望む。そこからは、どの埋葬方法がベストか?という会議に。谷が導き出した最終回答が的確すぎる。この話から葉野が髪を切りショートカットになるのだが、冒頭の被検体選びを回避するためだけの処置なのかな?

・第13話 強靭な水
伊賀が海が好きだという話。泳ぐと生態系に影響を及ぼすので、直立しているだけだが、波のぶつかり合いを肌で感じるのが好きなのだという。話の流れで伊賀は「海に連れてって」とお願いするのだが、葉野は言葉を濁した返答をする。113P左上の葉野の表情が描かれていない2コマが、なんとも意味深。単に連れて行くのが面倒だっただけなのか、海によくない思い出でもあるのか?

・第14話 観察と情報
谷は、魚の様子を観察している津軽を発見。会話を楽しむが、そこに伊賀たちが近づいていた。ヘルメットが浮かんでいる。つまり近くに津軽がいる!探せ!という、大石&葉野の行動ルーティンが面白い。しかし、釣りすら「汚い」と切って捨てる津軽の潔癖度は常軌を逸しているな。

・第15話 波
13話からの流れで、大石家所有のプールに来た伊賀(波は葉野がバタ足で起こす)。十分に満喫するものの、プールから出る方法を考えていなかった。谷を働かせることになるのだが、その過程で大石のハ虫類嫌いが明らかになり、大石との通常とは違う関係も浮き彫りになる(これまでの関係も普通ではなかったけど)。この大石―谷の関係というのも、物語の縦軸のひとつになっていくのか?

・第16話 頭脳ども
伊賀の頭脳が実は明晰だったことが、テスト結果から明らかに。葉野は勉強を教えてもらおうとするものの、藤村が自らの体験談を語り不可能だと諭す。その裏で展開される、バイクに乗った男2人を使うという、大石家のテスト結果伝達方法に驚かされる。あと、このころになると葉野の眉頭のギザギザ具合は、1話のころの面影は微塵も感じられなくなっている。

・第17話 涙に劣る嘘
筑前、落涙。その理由は会藤の首の皮が硬くなり、つねりの効果がなくなってしまったからだった。しかし、つねり現場を目撃した葉野は、会藤が一時的に仮死状態になることにより、窮地を凌いでいたことを知る。そして、すぐさま情報をリークする。この筑前vs会藤の攻防も、第3の縦軸に発展していくのかな?

・第18話 辞書の勝利
前話ラストで「一元的」と言い、この話冒頭で「一見さん」と言った葉野の言葉が理解できず、釈然としない伊賀。こういう趣向のマンガだと、家族が描写されないのがセオリーなだけに、言葉を教える役として父親が登場したのが意外だった。この話ではダミーの辞書が出てきたけど、いろいろと家に伊賀対策を施しているんだろうな。

・第19話 特別
葉野に面白い本を読ませてもらった(葉野がページをめくる)お返しとして、山中に誘う伊賀。その目的地にあったのは、伊賀の力でもビクともしない硬さを誇り地中に刺さったままの『槍』だった。でも、ところどころに突起があったり、いわゆる普通の槍とは少し趣が違う。伊賀がウソをつきながら父親の素性を語ったがために、槍の真相は有耶無耶に。

・第20話 夏の懐中
前話からの帰り道。伊賀が2週間もの期間、検査入院することが語られる。それを理由に夏休みの宿題がないことを羨ましがられると思っていた伊賀と、入院の詳細が気がかりな葉野。2人の思考が著しく剥離する珍しい話。あと入院中のイメージカットで、予備のヘルメットが枕元に常備されているのが面白い。

・おまけ漫画
ハ虫類嫌いを知られてしまった大石と、苦手なものを知られまいとする葉野の静かな攻防。吹き出しの中の、蛇顔の大石がカワイイ。


今回は、普通の青年コミックと同じB6版の大きさ。『成程』→『駄目な石』と、判型がだんだん小さくなっている。




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  1. 2016/04/11(月) 16:24:51|
  2. 平方イコルスン
  3. | コメント:4

駄目な石 の感想


駄目な石駄目な石
(2015/04/27)
平方イコルスン

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平方イコルスン2冊目の単行本『駄目な石』の感想です。前作『成程』から約33ヵ月を経ての発売となります。

・装丁
B5と巨大だった前作と比較すると、今回はA5版と二回りぐらい小振りになった印象。漫画の単行本然としたものの、手書き台詞のルビや書き文字の中には、読みにくいものも散見されます。

・ゲスト
白泉社から発売されている『楽園』の執筆陣が書道で、単行本タイトルの『駄目な石』と書いています。黒井緑先生と位置原光Z先生が名前に加えて学年も書いているのと、シギサワカヤ先生の作風とは違う荒々しい書体が気になりました。

・内容
楽園に掲載された11本、および『楽園web増刊』で発表された15本、加えて描き下ろし後日談2本を加えた、全28本のショートストーリーが収録されています。起がなく承から始まり、三次元的な転を見せ、唐突な結があったりなかったりというような感じです。また『成程』では半数ぐらいを女子大生が主役のエピソードが占めていましたが、今作は登場する学校を山間の高校に限定したのが特徴でしょうか。

・お気に入り
『みっとも』
髪形を教師・稲垣に注意されたことから若山さんが、あてつけに様々な髪形を試みる。他の登場人物の目は小さな点で描写されることが多いのに、しっかりと瞳が描かれて美少女であるとされているのに、イコルスン作品には珍しく反骨心を剥き出しにしているところが、非常に印象的でした。
『相討ち』
西洋の武具甲冑マニアの江見さんが、自作の槌を学校に持参。それで不意に殴打されてしまった高瀬君とともに、放課後のひと時を槌活動に費やす。それがモラトリアムな青春のうちだけに認められた特権だと分かりつつも、槌に全てを捧げようとする様が胸に響きます。
『報復上手』
基本的にはニジリー石坂と、彼に恋心を抱くクラスメイトの女の擦れ違い恋模様の話なのですが、個人的には『合唱の興が乗ってくると腕を大きく振る』成瀬さんが、気になります。『成程』における肘の汚い国木田なみのインパクトがあると思います。

・白黒
イコルスン作品では、背景が白黒2色で構成されることが多いのですが、その境目をたどることで、順番にフキダシを読むことができるというのが、非常にテクニカルな仕掛けだと思います。
イコルスン 白黒


短編集は、また1年以上の時間を経ての発売になるでしょうから、そのあいだにトーチで連載されている『スペシャル』の単行本化を強く期待したいものです。







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  1. 2015/04/27(月) 16:27:32|
  2. 平方イコルスン
  3. | コメント:0

成程 の感想

成程成程
(2012/07/31)
平方 イコルスン

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平方イコルスン(ひらかた いこるすん)の初単行本『成程』が、先月末に発売になっています。
白泉社から発売されている『楽園』に2011年から掲載された10本、および『楽園web増刊』で発表された10本、プラス描き下ろし3本(内1本は小説)が収録されています。

・装丁とか
サイズは雑誌と同じB5版でマンガの単行本としては、かなり大きいです。『ナウシカ』とか『AKIRA』とかと同じ大きさです。ちなみに、タイトル部分とキャラクターにはツルツル加工がされていて、ベースの白い部分には、ちょっと色味のちがう白で細かい模様が施されています。たぶん、PC上では確認できないかと。

・カラー寄稿
二宮ひかる、kashmir、黒咲練導、沙村広明、雁須磨子、久米田康治、木尾士目、浅田弘幸、宇仁田ゆみ、位置原光Z、シギサワカヤ、鶴田謙二というそうそうたる顔ぶれからカラーイラスト&コメントが寄せられています。でも、大きさが8cm角の正方形なので、コレを期待して買う人は、ちょっと肩すかしかも。

・フリーハンド感
作者のブログにペンタブレットの話が出てくるのでPC上で作業していると思うのですが、全ページにわたってフリーハンド感がみなぎっています。吹き出しの中のセリフが手書きだし、コマ割りも高さが微妙にそろっていなかったり幅が一定でなかったりします。トーン処理も一切なく、制服なんかも斜線やカケアミ、ベタなどで表現しています。通常サイズの単行本だと、こういった部分が作り出す独特の雰囲気が消えてしまっていたかもしれないです。

・内容
1話4ページ程度のオムニバス・ショートストーリーで、女子高生(か女子大生)の数人グループが主人公です。まず、シュールなことが起こり(誰のか分からないヘルメットの忘れ物)、でも大げさには扱わずシレッと展開して(誰のものでもない)、そのままフワッと終わってしまう(匂いフェチにはたまらない一品)というのが、基本形でしょうか。エピソードが1~10で構成されているとすれば、そのなかの4~7だけ(話によって、その割合は違うけど)を見せられたような

・お気に入り
個人的にイチバン好きなのは『とっておきの脇差』です。『男をめぐって女同士が殺し合いの決闘をする』のが当たり前で、友達が殺されたというのに事後処理を淡々と進める付添いの女性2人とか、日常と非日常の混在具合がが絶妙で、わずか6ページだというのに何度も読み返したくなります。
成程
この鎖鎌が使えていれば…。


面白いのは間違いないのに、それを説明するのがとても難しい作品です。



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  1. 2012/08/13(月) 18:10:29|
  2. 平方イコルスン
  3. | コメント:0

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