先日、マンガ大賞2023が発表されたことで、主なマンガ関連の賞の受賞・候補作が出そろったことになります。
そこで、今回は『どの作品が多くの賞にランクインしたかをランキング』してみました。
対象は……
・次にくるマンガ大賞 2022(次に)
・夜ふかしマンガ大賞(夜ふかし)
・このマンガがすごい! 2023(すごい)
・THE BEST MANGA 2023 このマンガを読め!(読め)
・俺マン2022(俺マン) ※2
・全国書店員が選んだおすすめコミック2023(書店員)
・出版社コミック担当が選んだおすすめコミック!(コミ担) ※3
・全国書店員が選んだおすすめ少女コミック2022(少女)
・マンガ大賞 2023(大賞)
・ebookjapanマンガ大賞2023(ebj) ※4
・第13回ananマンガ大賞(anan) ※5
・ブロスコミックアワード2022(ブロス)
・年刊書店員すず木2023(すず木)
の13個です。
※1 基本的に、各ランキング50位までを対象とし、それ以下の順位で発表されている場合でも、ランク外という扱い。
※2 今年は公式に展開されなかったので、12月31日~1月9日までの期間で個人的に集計したものを参照します。
※3 Pick Upとして紹介されたものは、同率10位として扱います。
※4 トップ3以外で、書店員賞は5位。それ以外のノミネート作品は同率11位として扱います。
※5 大賞を1位、準大賞を同率5位として扱います。
10位
天幕のジャードゥーガル/トマトスープ/秋田書店/3+1すごい1位 俺マン7位 大賞5位
読め11位モンゴル帝国の捕虜となった女性が、持ち前の知識を生かして後宮で生き残ろうとする。すごいの1位をはじめ、平均順位の差で さよなら絵梨/藤本タツキ をかわしてのランクイン。
9位
うるわしの宵の月/やまもり三香/講談社/3+1少女1位 ebj1位 anan準大賞
すごい11位周囲から「王子」と呼ばれ人気のある女子が、同じく「王子」と呼ばれる男子と出会うところから始まるラブストーリー。anan、少女など、狙えるところで確実に高順位を射止めた。
8位
黄泉のツガイ/荒川弘/スクエアエニックス/3+2すず木1位 俺マン3位 書店員2位
すごい15位 ebjノミネート世俗から離れた暮らしをしている兄妹が、戦いの日々に巻き込まれる。作者11年ぶりのガンガン復帰作で、久しぶりのバトル・ファンタジー。ベテラン作家らしく、安定した面白さがある。
7位
クジマ歌えば家ほろろ/紺野アキラ/小学館/3+4ブロス7位 書店員9位 ebj書店員賞
次に18位 すごい13位 すず木45位 俺マン27位人の言葉を話す謎の鳥?との奇妙な同居生活。既存の概念を打ち壊すクジマのキャラがクセになる。上位進出は少ないものの、様々な賞に顔を出し、見事にランクインした。
6位
光が死んだ夏/モクモクれん/KADOKAWA/3+4すごい1位 ブロス5位 書店員5位
次に11位 俺マン38位 大賞11位 ebjノミネートある山間の集落に暮らす少年は、親友がいつのまにか『ナニか』にすり替わっていたことに気づいてしまう……。ここまでは下位ランクイン数で順位が決まった。大賞が11位でなければ……。
5位
これ描いて死ね/とよ田みのる/小学館/4+1すごい6位 読め10位 俺マン1位 大賞1位
次に16位離島に住む女子高生たちが、青春のすべてをマンガ制作にぶつける。もともと強いマンガ愛を持っている作者が、そのすべてをぶつけている。番外編的な元漫画家の先生のエピソードも泣ける。
4位
正反対な君と僕/阿賀沢紅茶/集英社/5+3次に2位 すごい9位 anan準大賞 俺マン3位 大賞3位
読め48位 すず木21位 書店員12位ギャルだけど周囲の空気を読んでしまう女子と、物静かだけど自分の意見をしっかりと言うことのできる男子のラブコメ。コミュニケーションの取り方など、現代的な感覚の描き方が新鮮。ananにジャンプ作品が入るとは。
3位
タコピーの原罪/タイザン5/集英社/6すごい3位 読め9位 すず木2位 ブロス3位 俺マン5位 大賞10位
ハッピーを広めるため地球に降り立ったタコピー。イジメられているしずかちゃんと出会い助けようとするのだが……。連載当時から大きな話題を集めた2022年を代表する一作。ただ、3月と早い時期に完結してしまったのがマイナスに働いたか。
2位

あかね噺/末永裕樹 馬上鷹将/集英社/6+1
次に3位 すごい4位 すず木6位 俺マン8位 書店員3位 大賞2位
読め48位父親の想いを受け継ぎ、女子高生が落語の世界に挑戦。『真打』を目指す! 1位獲得はなかったものの、手堅くトップ圏内のランクインを重ねた。次世代ジャンプを引っ張っていく存在となるか。
1位
スーパーの裏でヤニ吸うふたり/地主/スクエアエニックス/6+2次に1位 すごい7位 すず木7位 書店員4位 コミ担1位 大賞8位
俺マン14位 ebjノミネート仕事に疲れたサラリーマン佐々木の唯一の癒しは、スーパーのレジ係の山田さんの接客だった。そして、田山という女性と一緒にタバコを吸うようにもなり……。次に、コミ担の1位など満遍なくランクイン。ジャンプ勢とのデッドヒートを制し見事に1位に輝いた。
10位以下では、
日本三國/松木いっか と
薫る花は凛と咲く/三香見サカ が下位ランクインが多く隠れ人気作といった感じだったと思います。しかし、講談社作品がここまで伸びないとは予想外でした。



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- 2023/03/28(火) 19:00:00|
- ランキングのランキング
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今年も例年通り、昨年12月から今年11月までの期間で自分が読んで面白かったと思う読み切り作品などをまとめていきたいと思います。基本的に、単行本化したものは除外しています。
○週刊少年チャンピオン 短期連載今年チャンピオンに掲載された短期連載作品は、ドラマ化を記念した特別編の
ナンバステイゴールド/小沢としお(22+23~26号掲載)以外だとゼ
ロ距離ライフ/椎葉裕巳(52~2+3号掲載)と
正道、異世界転生ぶ/トダフミト(38~41号掲載)の2本のみ。なので、ベストは選ばないでおきます。そもそも正式連載も7本しか始まっていないので、誌面の膠着化が気になるところ。
○週刊少年チャンピオン 読み切り今年掲載された読み切りは33本。出張版の
おなかがへったらきみをたべよう/たばよう(25号掲載)、スピンオフのスピンオフ
魔界の主役は我々だ!特別編 トントンの相談飯の夜明けぜよ/南郷晃太 津田沼篤 西修 コネシマ(51号掲載)などを除いたなかで良かったのは
なよ竹のナル/のりしろちゃん 幸田幸路(19号掲載)
幼馴染に屋上に呼び出され「これ告白か!?」と思ったら「自分は月から来た」と、まさかのカミングアウトが待っていた。ドッキリでは?と疑ってからオチまでの、感情の動きや表情の描き方が抜群だった。
Beautiful Girl/拓馬海(33号掲載)
自分の美しさに絶対的な自信を持っている霜月さん。イケメンの壽崎君に告白するものの、想定外の理由で断られてし
まう。……。この話だけでも満足感はあるのだが、よりまとまったボリュームで読んでみたいテーマ。美を現す画力も伴
っている。
カラフルボイス/小池健斗(36+37号掲載)
中学入学早々、となりの席になった女子は極度の人見知りで、腹話術を使って会話する子だった。パペットマペット姿のツカミからコメディだと思って読んでいたら、まさかこんな感動的な着地を見せるとは。保健室のシーンが最高。
ブレーメンには行けません!!/タケオキュージュウ(38号掲載)
路上ライブの聖地・ブレーメン広場での演奏を目標に掲げる、JK4人組のバンド。絵が抜群に可愛いし、童話にちなんだオチのつけかたも良かった。
ギャル忍/つみきどう(50号掲載)
任務を受けたベテラン忍者のパートナーに選ばれた新人忍者は、ゴリゴリのギャルだった。気配をなくす忍者と自己主張の激しいギャルという正反対の存在のギャップが、上手く機能していたと思う。
といったところ。ベストは
日比谷さんの刈り上げ/帯屋ミドリ(31号掲載)です。
隣の席の日比谷さんの刈り上げを触りたくてたまらない小松君。そこで自分も坊主頭にすることで、互いの刈り上げを触り合う展開に持っていこうとする。ちょっとしたフェチっぽさもあって、とても良かった。日比谷さん、たぶん襟足だけじゃなくて上のほうまで刈り上げているであろうというのが、さらなる高評価ポイント。

そして、今年のチャンピオンのハイライトは、禁欲生活を送るあまり全身がチンポと化してしまった板垣青年です。(210日900m/m以上/板垣恵介) あと、今年はえなこさんが表紙を飾る回数をカウントしていたんですけど、6回でした。思ったより少ない印象。去年が多かったのかな。
◯アフタヌーンアフタヌーン本誌、モアイやコミックDAYSにアフタヌーンレーベルとして掲載された読み切りもまとめていきます。
ケモ夫人/藤想(4、7、10月号掲載)など、出張版を除いたなかで面白かったのは
泳ぎつづける/春琉渡瑠(コミックDAYS 12/07公開)
河原で謎の卵をひろった少年たち。彼らのうちのひとりは、クラスの陰キャの女の子をイジるネタを探そうとする。鬱屈とした田舎の少年の話かと思っていたら、後半で少女の正体が明かされるシーンで持っていかれた。閉塞した空間を水槽に例えたのが上手い。
先生しっかりしてください/甘島伝記(モアイ12/07公開 グフタ1月号掲載)
父親の形見のバイクを壊されてしまった男子高校生。加害者の教師から金を回収しようとするが、フワフワした人当たりに翻弄されてしまう。ふたりの関係性の変化の描き方もいいし、夢のシーンの中に教師が出てくるところの雰囲気が面白い。絵も90年代っぽくて独特の雰囲気がある。
20世紀のアフタヌーン ~由利編集長のはなし~/沙村広明(2月号掲載)
創刊35周年記念読み切り。現在のアフタヌーンを形作ったと言われる、2代目編集長の由利耕一氏の逸話を、当時新人
だった沙村氏の目線で描く。こういった切り口で『アフタヌーン創作秘話』みたいなシリーズも展開できるかもと思っていたら、現在電子書籍のほうからは消されているとのこと。なにかトラブったのかな?
老杉の神様/村松昇汰(モアイ 02/07公開 グフタ3月号掲載 コミックDAYS 06/28公開)
山の神様(老いた杉の木)に毎日お祈りをしていた少女。流行り病を鎮めるために、人柱として奉げられることになってしまう。そのことがガマンできない神様が、元凶の別の神のところに同行して抗議する。それぞれの神の造形も素晴らしいし、相反する考え方の描き方も無理がなく、世界観にグイグイと引き込まれる。
神屋/山口つばさ(6、7月号掲載)
名門医大に首席で合格したものの、血が苦手なので現在は場末の個人医院で働いているタナカ。院長のお使いで行った神屋というお店でヨハンという人物と知り合う。別世界のような独特の空気が漂う店内の描写が素晴らしく、ヨハンの接客にハマり堕ちていくタナカの様子も耽美な感じで目がはなせなかった。短編集に収録されたけど、特例で。
ボールドを鳴らして/西原梨花(モアイ06/07公開 グフタ7月号掲載)
映画監督として活躍しているが、子供の対応が苦手な男。それは自分の娘に対しても同じだった。娘がハマっているストップモーションアニメを手伝うことで、距離感を計り直していく。映像づくりの豆知識もあるが、親子の関係性や父親の朴訥としたキャラも良い。モアイから消えている?
アウトライアー/ヨシノコウイチ(コミックDAYS 09/13公開)
仕事は順調。会社内でも上手く立ち振る舞っているつもりだったが、会議中に陰の実力者に歯向かう形になってしまい、閑職に飛ばされた主人公。しかし、そこで改めてモノづくりの面白さに気づくことに。お仕事物だけでなく、人生全体でも通用するテーマだった。
ベストは
電離層のゴースト/式森立人(モアイ05/07公開 グフタ6月号掲載)です。
偶然、無線を受信した主人公。その相手は、どうやら親に捨てられた子供らしい。なんとか居場所を特定し助け出そうとするが……。作者が管制官時代に体験したことが元になっているとのことで、SF系の話ながらどこか地に足がついた感じで、話運びも丁寧だった。真相判明のときの驚きもあったし、素晴らしい出来。
○ハルタ今年度のハルタ(90~99号とテラン冬号)に掲載された読み切りは、ちょうど100本。そのなかで面白かったのは
チェンジマーク/内田晟(90号掲載)
いつものようにダラダラと大学に行った佐治は、山野さんという女性と知り合う。しかし、そこから日常におかしな変化が起こり始める。絵柄やタイムループの独特の雰囲気など、とてもレベルが高い。どちらかというとハルタではなく、ビームとかアックスっぽい空気感がある。
どうせ明日も同じ君/路田行(テラン 2022冬号掲載)
毎日ダイナーに来る客の秘密を知ることになった店員のマリ。死んだ恋人のための生活から、強引に抜け出させようと考るが……。序盤はコメディ風だったのに(急に壁の上にワープしたり)、中盤以降の転調具合が見事だった。特に「何も」のコマ。前向きなラストも良かった。
花が咲いたよ/空次郎(92号掲載)
園芸部の先輩からもらった種を植えたら、翌朝部屋がジャングルに。さらに翌日になると他の花が咲き、魚やアルマジロの実がなることも。いったい何の種なのか? 8ページだけど起承転結がしっかりしているし、オチも素晴らしかった。
龍の住処/吉田はく(93号掲載)
やがて龍になるというヘビに寄生されてしまったユイ(♂)。退治するために龍笛を買って吹いてみる。そこから雅楽にのめり込んでいく様子、小さな挫折、ヘビの励ましと、感情の揺れ動き方も後半の時間経過の演出も素晴らしかった。ヘビもシンプルなデザインなのに表情が豊か。
視線決戦ウインクキラー/西田心(94号掲載)
女子児童が頭部を爆破されるという事件が発生。同じ学校に通う琳太朗は、担任の美杉先生が犯人なのでは?と疑い始める。全編にわたるジョジョテイスト、ウインクで人を殺すというアイデア、琳太朗に同行する薫子の秘密の開示のタイミングと伏線の置き方、クライマックスの逆転の展開と、かなりの高レベル。
填匝町都市パン化計画/不死デスク(95号掲載)
パンを使った町おこしをしている町が舞台。町民がパン派とコメ派で対立しているシュールさ、ギネスを狙った巨大パンのグロテスクさ、メイン2人の甘酸っぱい関係性、それぞれが絶妙なバランスの上に成り立っていると思う。スタート銃の「パン!」とか、芸も細かい。
本を葬送る/児島青(98号掲載)
古本屋を営む男が、亡くなった男性の蔵書を買い取ることに。本の山を一冊一冊見ることで、会ったことのない人となりを推しはかるシーンが素晴らしい。特に、日が暮れて本が見えづらくなってからの一連の流れが最高。
ハルタのベスト、および
〇読み切り・オブ・ザ・イヤーは
キッサコ/児島青(97号掲載)です。
仕事をズル休みしてしまった女性。不思議な子供に誘われて、路地裏の民家で煎茶をいただくことになる。これがデビュー作とは思えないほど絵も演出も達者だし、茶器やお茶の歴史の解説も丁寧。ラストのファンタジーのトッピングも見事。ものすごい才能を見せつけられた。
○ジャンプ系主にジャンプ+から、他のジャンプ系で読んだ読み切りもまとめたいと思います。単行本化した(これからする)
さよなら絵梨/藤本タツキ(ジャンプ+ 04/11公開)、
オナ禁エスパー/竜丸(となりのヤングジャンプ 09/15公開 ヤングジャンプ43号掲載)などを除いたなかで良かったのは
ブシギャル/平田将(ジャンプ+ 02/17公開)
ある城の城主は、ギャルだった。絵柄や話の展開が真っ当な時代劇なので、そのなかにギャルが配置されいるのがいアクセントになっている。ギャル=傾奇者で、どう生きるか?という人生の話にもなっているし、ものすごいレベルの高い怪作だと思う。デコった刀が鞘に入らないギャグをやってほしかった。
飛んで福山/大山田(ジャンプ+ 06/08公開)
陸上に挫折し、無気力な日常を送っている福山。同じクラスのデブが告白している現場を目撃してしまう。何に対して努力するのか、そのことにどう向き合っているのか?ということの描き方が素晴らしいし、見開きのジャンプシーンは冒頭の立ち止まるところとの対比にもなっていてとても印象的なものだった。
死守れ日常系ヲ/一ノヘ(ジャンプ+ 08/07公開)
地球を襲う敵と戦う みい 。周囲の人間も気持ちよく接してくれているのかと思われたが……。友人の ゆう が“あるもの”を守るために戦っていることが分かってから、青春のエモくアツい友情ストーリーとしてのエンジンのかかり具合がすごかった。みいが戦うときの姿もバケモノじみているのが意外だったし、合間に挟まる4コマで日常を語っているのもいいアクセントになっていた。
おきばこ!!/あそびや わぁー(となりのヤングジャンプ 08/26公開)
ダンジョンに宝箱を設置するという仕事をしている、新人アマヤの奮闘記。まず、絵が新人離れしていて、ズバ抜けて上手い。特にクライマックスのミミックの出現シーンは圧巻。着眼点がすごいし、このまま連載化しても面白そう。
静と弁慶/三木有(ジャンプ+ 09/08公開)
薙刀の全国大会。小さいころから一緒に競技を続けてきた弁慶と静のふたり。最初は、男ながら薙刀を続け、演技の成績が優秀な弁慶の話かと思っていたら(演技の描写も良かった)、静のほうの気持ちが明らかになるモノローグからは、一気に2人の関係性の深みが増して、面白さが段違いに加速していった。
負けるな加持野さん!!!/石島利休(となりのヤングジャンプ 09/12公開 ヤングジャンプヒロイン掲載)
ある事情により、20で女子高生をやっている加持野さん。様々なギャンブルに手を出すものの、ことごとく負け続けるのだった。先生に金を借りる → 負けるのテンポ感が良い。いい意味で力の抜けたコメディ。JKギャンブルものとして連載できそう。
シルバーロック/三上カン(ジャンプ+ 11/06公開)
元ジャズドラマーの主人公。孫娘が音楽の道をあきらめかけていることから、重い腰を上げドラムを再開。そして若者のバンドに参加することになる。目のアップの見開きから始まる演奏シーンの迫力がスゴイ。さらに、その後の沈黙の意味合いが、孫が学園祭で感じたものとは逆の意味だという演出もスゴイ。
といったところ。ベストは
へのへのもへじと棒人間とパンツ/林快彦(ジャンプ+ 10/12公開)です。
自他から『棒人間』として認知されるという病気の佐藤。治すためには脳への刺激が必要だとして絵を描き始め、クラスで唯一棒人間なのをイジってくる分目さんに教えを請うことに。中盤の「好きだからだろぉ!!!!」からのエンジンのかかり具合が凄まじく、そこから一気にエンディングまで雪崩れ込んでいく。クライマックスの見開きで、キャンバスに顔の影が写るところが最高。
○その他そのほかに、定期購読している媒体以外で気になった読み切りは
かけ足が波に乗りたるかもしれぬ/菅野カラン(コミックDAYS 01/20公開)
家にいるのが嫌なので、離婚した母親のところへ家出する。その道中で、俳句の宿題をこなしながら。付箋にランダムに書いた575で適当に俳句を作っていくのだが、そのリズムが心地よい。段々と付箋を使わなくなっていくし。家族云々は悪くはないが、俳句部分だけでも勝負できるレベル。
マイリトルイレンジメモリー/砂川ユウ(コミックDAYS 2/24公開)
帰省した主人公。小学校のときの友人を見かけたことから、当時の思い出がよみがえる。特別なことは起こらないものの、現実と思い出とがつながる演出、引っ越すかもしれないという男子の心の葛藤などがよく描けていると思うし、ボールを投げることやオレンジといったモチーフの使い方も抜群に上手かった。
合体超人ビッグスパークル/ヒロタシンタロウ(くらげバンチ 04/29公開)
超人に変身し、怪獣を倒している主人公。しかし、一緒に変身する恋人から別れを告げられてしまう。執着しているのは恋人に対してなのか、それともヒーローになることなのか? そもそも怪獣を倒すことの是非は……? と当初の雰囲気からかけ離れた所へと着地する。モヤモヤを残す内容。
キャンパーダウンの伝説/池田73号(マグコミ 04/30公開)
ドラゴンレースのスター騎手だったものの、高齢を理由に家族から免許の返納をすすめられたキャンパーダウン。自分はまだまだできるということを証明するために、ドラゴンレースに復帰することに。家族の問題としても、若手レーサーとの対比としても、ともにレベルが高い内容。竜のライブリーのキャラも良い。
空を渡る生き物/コノシマルカ(週刊少年サンデー26号掲載 サンデーうぇぶり05/25公開)
地味な男子と派手な女子。クラスから浮いている2人がグッピーの飼育を通じて打ち解けていく。メインで扱う生き物がグッピーでラストでああいうことになるのに、このタイトルをつける作者のセンスがスゴイ。閉塞田舎ものとしても質の高い一作。
私のカレーを作りなさい/森もり子(webアクション 05/27公開)
Sの女性の命令でMの男がカレーを作ることに。手順に特に目新しいところはなく(素人の失敗ていど)、SMもアクセント程度(煮込む時間になんかプレーしている)なんだけど、どこか面白い。こういうかたちのカップルがいてもいいよね的な。
シビは寝ている/矢野満月(コミックDAYS 06/30公開 モーニング31号掲載)
飼い猫のシビが死亡。主な飼い主の彼女のほうは、シビを剥製にするという。それを受けて彼氏のほうは……。ペットの死という誰もが経験するであろう出来事。それを受けての心の揺れ動きの描き方が抜群に良かった。激しく泣きさけばなくても、心の中では様々なことが揺れ動いている。猫が冷凍庫で凍っている絵面もインパクトがあった。
いとをかし/白川すみれ(コミックDAYS 07/21公開)
タクシーに乗った一発屋の芸人。今後への不安を愚痴るが、その様子を聞いていたタクシー運転手の何気ない一言から……。漫才パートの面白さもだけど、終盤でお笑いおたくの友達が登場してからの怒涛の勢いもすごかった。
霊描いてみない?/照ヨウ(マグコミ 09/05公開)
漫画家志望の青年が、有名なホラー作家と出会う。彼らは霊を視ることのできる体質で、一緒に心霊スポットに取材に行くことに。どことなく、ジョジョや冨樫義博っぽさがあって、幽霊の行列のシーンなんかは独特の迫力があった。序盤は説明セリフが多いものの、それを補って余りある勢いがある。
リアルエステート/阿記江衣子(ゲッサン12月号掲載)
不動産屋で抜群の営業成績を誇る主人公は、他人の心を操るという超能力が使えた。ところが、その能力が効かない相手が現れる。「能力を使わなくても契約をまとめる」という主人公の意地、客の正体、シベリア送りの件など、バランスの取れたコメディ。物件紹介ファンタジーとして、連載まで行けると思う。
といったところ。また、読み切りではなく連載作品の中の1話としては、
スキップとローファー/高松美咲 第39話「うだうだの帰り道」(アフタヌーン4月号掲載)が最高の出来でした。真に心を許し会える友達のなんと貴重なことか。結月と誠の話は、どれも素晴らしい。
といったところ。来年も、こういうことができたらいいと思います。よろしくお願いします。
テーマ:漫画の感想 - ジャンル:アニメ・コミック
- 2022/12/01(木) 19:00:00|
- 読み切り感想まとめ
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さて今年も残り1ヵ月半を切り、様々な漫画関係の賞が発表される季節となってまいりました。各所でランキング予想されると思いますが、このブログでもやってみようと思います。
※あくまでも『ランク入りしそう、評価されそう』という基準で選んだものですので、必ずしも全ても読んでいるわけではありません。ご了承ください。
タイトル/作者/出版社/単行本既刊数
◆バズった系☆
ゴールデンカムイ/野田サトル/集英社/31巻完結約8年に及ぶ連載が4月に完結。それにともない全話無料公開したことが大きな話題を集め、この機会に新規参入の読者を多く獲得した。レギュレーション的に対象外の賞もあるが、それでも完結記念の票が入ることを期待して。
☆
さよなら絵梨/藤本タツキ/集英社/1巻完結余命わずかな母親の様子をスマホで撮影し、それを学校で上映したら非難の嵐に。そんなときにひとりの少女と出会う。ジャンプ+での読み切り公開 → 単行本発売という流れで、昨年に続き反響を集めた。ただ『ルックバック』ほど爆発力はなく、そこまでは伸びないかなという印象。
☆
税金で買った本/ずいの 系山冏/講談社/4巻10年ぶりに図書館に足を踏み入れたヤンキー。なぜかそこでバイトすることになり、様々な知識を吸収していく。もはや漫画レビュアーのトップランナーに立った趣のある麒麟・川島が各所で紹介し、様々なメディアで取り上げられた。





◆恋愛系☆
薫る花は凛と咲く/三香見サカ/講談社/5巻隣り合う由緒正しきお嬢様校と、ガラの悪い底辺男子校。近いけど遠い学校に通う男女が、まさかの出会いをする。マガポケ連載とは思えないほど、ピュアな青春学園ラブコメがくり広げられている。近いうちの他メディア化も確実。
☆
正反対な君と僕/阿賀沢紅茶/集英社/2巻明るく元気だが周囲の目が気になってしまう女子が、物静かだけど自分の意見をハッキリ言うことのできる男子に恋をする。現代的なラブコメで人気を博している。近年猛威を振るったジャンプ+勢は小休止という感じだが、この作品は来ると思う。
☆
その着せ替え人形は恋をする/福田晋一/スクウェア・エニックス/10巻今年の冬クールに放送されたアニメが大好評。2期も決定し、単行本の売り上げも750万部を突破した。アニメの人気を受けて既刊数がそれなりにある作品が再評価を受けるパターンはあるので(メイドインアビスとか)、その流れに乗れるのではないかと。





◆女性向け☆
女の子がいる場所は/やまじえびね/KADOKAWA/1巻サウジアラビア、インド、日本、様々な国で暮らす10歳の少女。文化、宗教、大人たちの教えが違うなかで何を考え何を思うのか……。現代的なテーマを真正面から描いている。女性からの熱い支持が期待できる。
☆
ジーンブライド/高野ひと深/祥伝社/2巻男性社会に負けずに働く主人公。再会した風変わりな同級生との恋愛が始まるのかと思っていたら……。1巻のラストで一気にSF展開が待っていてド肝を抜かれた。フェミニズム描写は男性からすると少しキツイ部分もあるが、それでも惹きつけられる面白さがある。
☆
ブレス/園山ゆきの/講談社/2巻やりたいことを隠してきた男女が出会ったことから、夢に向かって動き出す。メイク、ファッションをテーマにした『文科系スポコン』といった感じで、ブルーピリオドが好きな層に受けそう。そして何より、カラーイラストの美麗さが素晴らしい。ファッション誌とコラボしてほしい。





◆ドキュメント系☆
断腸亭にちじょう/ガンプ/小学館/1巻ひねくれ漫画家に突然下されたガン宣告。人生の大きな出来事に直面し感じたことを書き記していく。『失踪日記』『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』など、こういった作品は高い評価を受ける傾向にあるし、支持が集まるのではと。
☆
鍋に弾丸を受けながら/青木潤太朗 森山慎/KADOKAWA/2巻世界中の危険地帯に赴き、そこでしか食べられないグルメに舌鼓を打つ。『クレイジージャーニー』が再開するし、こういう“行ってはいけない”系というのもひとつのジャンルとして定着しつつあるのかも。人が全員美少女に見えるという設定も斬新。



◆その他☆
クジマ歌えば家ほろろ/紺野アキラ/小学館/2巻ある日、家に居候することになったのは、2足歩行し人の言葉を話す謎の鳥?だった。居候コメディの枠を飛び出す、クジマのキャラがクセになる。渡り鳥なので、帰らなければならない期限が決まっているというのも面白い。個人満足枠として。
☆
これ描いて死ね/とよ田みのる/小学館/2巻離島に住む女子高生たちが、青春をマンガ制作に捧げる。『漫画家マンガ』は手堅い人気のあるジャンルだし、それをもとからマンガ愛が強いとよ田先生が描くとなれば、面白くなることは間違いない。個人的には、今年の本命作に推したい。
☆
光が死んだ夏/モクモクれん/KADOKAWA/2巻山間の集落に暮らす少年は、友人が“ナニカ”にすり替わっていることに気づく。さらに様々な事件が起き……。じっとりと湿気がまとわりつくような田舎ホラー。影を強調した絵柄が印象的。各種SNSでも話題を呼んだ。
☆
黄泉のツガイ/荒川弘/スクウェア・エニックス/2巻自然の中で静かに暮らしていた少年のユル。双子の妹のアサは、村の奥にある牢の中で「おつとめ」を果たしているという。荒川先生の11年ぶりのガンガン帰還作。先の読めない展開、スピーディーなアクション描写など、作者の力量の高さに唸らされる。








今年は、本命作品不在の年。こういうときはベテランが強いと思うので、『これ描いて死ね』『黄泉のツガイ』あたりを本命に推したいと思います。
- 2022/11/19(土) 15:00:00|
- ランキング予想&答え合わせ
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先日、マンガ大賞2022の結果が発表され、2021年を対象にした漫画賞が出そろったことになります。そこで、今回は『どの作品が多くの賞にランクインしたかをランキング』してみました。
対象は……
・次にくるマンガ大賞 2021(次に)
・このマンガがすごい! 2022(すごい)
・THE BEST MANGA 2022 このマンガを読め!(読め)
・俺マン2021(俺マン)
・全国書店員が選んだおすすめコミック2022(書店員)
・出版社コミック担当が選んだおすすめコミック(コミ担)
・マンガ大賞 2022(大賞)
・ebookjapanマンガ大賞2022(ebj)
・第12回ananマンガ大賞(anan)
・ブロスコミックアワード2021(ブロス)
の10個です。
1:10位以内にランクインした賞の数
2:↑が同じ場合は、10位以下にランキングされた賞の数が多い方が上位
3:それも同じ場合は、1でランクインした順位の平均が低い方が上位
というレギュレーションでやっていきたいと思います。
※ebjは、上位3作品以外はすべて同率11位、ananは大賞が1位、準大賞が同率5位という扱いです。
10位
東京ヒゴロ/松本大洋/小学館/3+1

すごい5位 読め1位 ブロス2位
俺マン15位大手出版社を早期退職した編集者の男。いったい、マンガに対してどんな思いを抱くのか? 【推しの子】/赤坂アカ 横槍メンゴ、ブランクスペース/熊倉献とランクイン数で並んだものの、平均順位の差でかわして10位にすべりこみ。
9位
ダーウィン事変/うめざわしゅん/講談社/3+3

すごい10位 コミ担2位 大賞1位
読め16位 俺マン30位 ebj11位人とチンパンジーの間に生まれた“ヒューマンジー”のチャーリー。彼のまわりで巻き起こる様々な出来事。差別、偏見など現代的なテーマを意欲的に取り扱っているし、第1話を非営利目的での再配布が可能にしたり、出版社側からのプッシュも熱い。
8位
トリリオンゲーム/稲垣理一郎 池上遼一/小学館/4+2

すごい8位 ブロス7位 俺マン8位 大賞6位
読め15位 ebj11位1兆ドルを稼いですべてを手に入れろ! 人ったらしの陽キャとコンピューターマニアの陰キャが手を組み、ゼロから起業する。実績十分、大御所の2人がタッグを組み見事な化学反応を生み出している。
7位
怪獣8号/松本直也/集英社/5

次に1位 すごい3位 読め10位 書店員2位 ebj1位
怪獣退治を夢見た男が謎の生物に身体を侵食され、自らが怪獣化してしまうことに……。近年猛威を振るうジャンプ+勢の一角。内容のみならず、スマホで1ページずつ読むことを意識した構図などが話題となった。2年連続のランクイン。
6位
女の園の星/和山やま/祥伝社/5+1

次に4位 すごい5位 俺マン6位 書店員9位 大賞4位
読め14位女子高を舞台にした、日常シュールコメディ。昨年の当ランキングでは3位を獲得。2年連続のランクインとなった。その人気が衰える気配はないので、今年もまた高評価が期待できると思う。
5位
ひらやすみ/真造圭伍/小学館/5+1

読め3位 ブロス1位 俺マン4位 コミ担6位 大賞3位
すごい26位人柄の良さだけが取り柄の主人公が、仲良くなった近所のおばあちゃんからタダで一戸建ての平屋を譲り受けることに。上京してきた18歳のいとこと二人暮らしを始める。ゆったりとしたストーリー展開が心地よい。
4位
ルックバック/藤本タツキ/集英社/5+1

すごい1位 読め2位 ブロス10位 俺マン1位 大賞2位
ebj11位マンガを描く女子2人が追いかけ続けた、それぞれの背中。ジャンプ+での読み切り発表時、そして単行本発売のタイミングでも大きな話題を呼んだ、2021を代表する一作。藤本先生個人としては、3年連続のランクイン。
3位
チ。‐地球の運動について‐/魚豊/小学館/6

次に10位 すごい2位 読め6位 俺マン4位 書店員5位 大賞5位
宗教的にタブーとされる地動説を信じ、命がけで研究する人間たちの情熱。昨年の当ランキングでは10位。そこからの大幅ジャンプアップとなった。連載は、まもなく完結となる予定。
2位
ダンダダン/龍幸伸/集英社/6+2

次に2位 すごい4位 俺マン6位 書店員1位 コミ担1位 大賞7位 読め19位
ebj11位オカルト、SF、ラブコメ、アクション、なんでもござれのハイテンションごった煮ストーリー。書店員、コミ担のダブル優勝で堂々の2位という結果に。読め、ebjでも20位以内に入ったのも大きかった。
1位
海が走るエンドロール/たらちねジョン/秋田書店/8

すごい1位 読め9位 ブロス9位 anan5位 俺マン10位 コミ担4位 大賞9位 ebj3位
数十年ぶりに訪れた映画館で、人生を変える衝撃的な出会いが。65歳のおばあさんが、映画作りの一歩を踏み出す。書店員がランク外だったのは意外だったが、それ以外ではベスト10入り。見事に1位に輝いた。
10位以下では、三拍子の娘/町田メロメ と 虎鶫/ippatsu と 今夜すきやきだよ/谷口菜津子が下位ランクインが多く、隠れ注目作といった感じだったと思います。





- 2022/03/29(火) 19:00:00|
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